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“プロ注”は少ないが熱戦多し。
選抜で気を吐く古豪・強豪校。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/03/27 11:30

“プロ注”は少ないが熱戦多し。選抜で気を吐く古豪・強豪校。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

3月24日、選抜第4日・1回戦の智弁和歌山対明徳義塾戦は、延長15回裏に暴投サヨナラという劇的な幕切れ。勝ち上がった明徳義塾は、29日に関東第一と2回戦を戦う予定だ。

点差よりも、内容は僅差だった龍谷大平安対大島。

 5日目に登場した龍谷大平安も先発投手で意表を突いた。当初は18人のメンチ入りメンバーから洩れていた2年生左腕の元氏玲仁を起用したのだ。この大島戦を勝ち上がれば4日後の8日目に横浜対八戸学院光星の勝者と対戦する計算になるので、エースの中田竜次(3年・投手)や主力の高橋奎二(2年・投手)を温存して備えようという狙いだったのだろう。しかし大島は1回、2つの死球と2本の安打で元氏に襲いかかる。

 4回には三塁打の4番小野浩之介(3年・外野手)を内野安打で還す効率のいい攻めで同点に追いつき、5回には3連続四球とバント安打で龍谷大平安を追い詰め、二盗失敗やけん制死で加点できなかったが元氏をマウンドから引きずり下ろし、エースの中田を引っ張り出した。

 スコアだけ見れば16-2という大差がついたが、点差ほどの実力差はなかったというのは以上の経過を見ればおわかりいただけると思う。大島で惜しかったのはホーム憤死が3回あったこと。最初の憤死は0-0の1回表、2回目の憤死は1-4の6回表、3回目の憤死は1-9の7回。これが無事に生還できていれば試合展開はずっと違ったものになっていただろう。

人気チームの登場と接戦で、甲子園の熱気は高い。

 確かに“プロ注”は少ないが、5日目が終わった時点で3点差以内の接戦が7試合あり、スタンドは沸きに沸いた。初日の履正社対小山台(3万6000人)、2日目の池田対海南(4万4000人)、3日目の報徳学園対沖縄尚学(4万2000人)、4日目の智弁和歌山対明徳義塾(3万人)、5日目の大島対龍谷大平安(3万3000人)と、多くの観客が詰め掛ける人気チームの登場と好カードが続き、私は寒風が首筋を撫でつける第二記者席でノートをつける手が休まることがなかった。

 今度はチームではなく選手に注目してみよう。投手は例年より注目選手が少なく、日刊スポーツに紹介する好選手の一覧表には、毎年20人前後の投手を書き入れるのが常なのに、今回は8人にとどまった。山田知輝(桐生第一・2年)と飯塚悟史(日本文理・3年)は打者としての評価のほうが高いので、厳密に言えば6人しか注目投手はいなかったことになる。

【次ページ】 中田翔以来と言えるレベルの強打者、岡本和真。

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