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宇佐美の穴と、「FW遠藤」の限界。
初戦黒星のG大阪に危機感はあるか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2014/03/03 12:15
FWとして出場するも、浦和の徹底マークにあい攻撃を活性化させられなかった遠藤保仁。宇佐美不在という大問題への解答はどこにあるのか。
宇佐美不在で、遠藤の起用法にも余波が。
ところが宇佐美が怪我で戦列離脱を余儀なくされると、隠れていた問題が急に鮮明になった。宇佐美がいた時でさえキャンプ中は点が取れず苦しんでいたというのに、宇佐美が離脱し、誰が点を取るのか、どう攻撃を組み立てるのか。それが開幕戦における大きな課題になっていた。
だが開幕戦のオーダーは、宇佐美が抜けた穴に佐藤晃大を入れただけで、遠藤のポジションもFWのまま。ガンバの攻撃は浦和の脅威にはならず、堅い守備を崩すことができなかった。
まず不思議に思ったのは、遠藤のFW起用だ。昨シーズン途中からの奇策は、宇佐美がボールをもらいに下がってくることが多いので、その仕事を遠藤に任せ、ゴールに直結する仕事に集中させるという意図があった。J2ではそれがうまくいき、宇佐美は18試合19得点という結果を残した。つまり遠藤のFW起用は、宇佐美ありきの戦術だったのだ。
だが、宇佐美が欠けた開幕戦でも遠藤はFWとして出場した。宇佐美の突破力とキープ力があるからこそ遠藤の支援も効果的だったが、佐藤はスタイルが違う。一人で突破するタイプではないので連係面が重要になり、遠藤の負担も大きくなる。
そこは浦和も研究していたのだろう。阿部勇樹が「ヤット(遠藤)さんが高い位置にいる時は、必ずサンドイッチして潰すようにしていた」と、語ったように、遠藤へのマークを厳しくし、前で起点を作らせないようにした。遠藤自身も前で窮屈そうにプレーしていた。ガンバは遠藤の良さを生かすことができず、まんまと相手の術中にハマり、攻撃の手段を失ったのである。
シーズン前には、一昨年と同様の言葉も聞かれ……。
また、J1での戦いを甘くみていた選手の意識にも問題があるように感じた。
J2に降格した2012年シーズン、チームの選手から聞こえてきたこんな言葉がある。
「オレたちは、もっとやれる」
「もっときれいに崩せる」
今シーズンが始まる前も、同様の言葉や「もといたところに戻るだけ。J1でも十分やれる」という声が選手から聞かれた。J2に落ちたのは大量失点という守備面の問題が大きかったが、同時に危機意識の欠如が招いた結果でもあった。いつでも巻き返せるという雰囲気が漂い、最後までなんとなく焦点が合わないまま戦い続け、気が付けば取り返しのつかなことになっていた。