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第2弾“新人王候補”を徹底検証!
今年のルーキーはこの10人に注目。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/02/14 16:30

第2弾“新人王候補”を徹底検証!今年のルーキーはこの10人に注目。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

熱心なラブコールを送り、見事交渉権を引き当てた田村恵スカウトとの縁も話題になった大瀬良大地。前田健太、野村祐輔の二大エースを抱える広島で、前評判通りの活躍を見せられるか。

巨人の1位・小林とバッテリーを組んでいた柿田。

 対抗に推した柿田は1イニングだけ投げている昨年の都市対抗1回戦、三菱重工横浜戦のピッチングが強く印象に残っている。最初に迎えた佐々木勉は西関東予選でチームトップの2本塁打を放ち、この試合の4回にも3ランを打っている強打者である。

 その佐々木に3球続けてストレートを内角に投げ、3球目も縦割れのスライダーを内角にねじ込み、三塁ゴロに打ち取っている。外角偏重で3ランを打たれた捕手・小林誠司(巨人1位)の反省を教訓にした配球を誉めるべきだが、最も神経をつかうコースに正確に直曲球を投げ分ける柿田のコントロールも見事である。

 ストレートの最速は146kmと平凡だが、力感は同じ社会人出身の石川、吉田、浦野に負けていない。社会人野球の四国大会ではJR東日本、京都大会ではJX-ENEOSに2失点完投しているが、'12年都市対抗→日本選手権→'13年都市対抗の優勝チームがJX-ENEOS、準優勝チームがJR東日本だったことを考えると、ツボにはまったときの迫力は浦野に匹敵すると言ってもいい。

チームが強くないほうが新人は活躍できる、というジレンマ。

 穴に推した岩貞は、外国人枠に余裕がなくスタンリッジと契約できなかった阪神の台所事情が追い風になりそうだ。投球フォームは「能見篤史に似ている」と言われることがあるが、能見がオーバースローなのにくらべ、岩貞はスリークォーター。その腕の位置が関係しているのか、投げに行くときの右肩の早い開きが気になる。能見はここで開くのかな、と思うところでも我慢して右側面をさらに打者に向けていく。

 右肩の開きが改善されれば最速148kmのストレートはさらに実戦力を増す。変化球はスライダー、カットボール、チェンジアップとひと通り揃い、最も評価の高いのはスライダー。岩田稔、秋山拓巳あたりと6番目の椅子を争うことになりそうだ。

 平田は対抗に挙げた柿田と同じDeNAの所属なので評価を「伏兵」に下げたが、即戦力候補に間違いない。投球フォームはゆったりとした動きに特徴があり、右腕の内回り、早く開かない左肩という長所がある。

 昨年の都市対抗1回戦、ニチダイ戦では3番手として登板、2イニングを無失点に抑えている。速い数値を出さない東京ドームのスピードガンが最速「144km」を表示しているが、速球派で知られる秋吉亮(パナソニック→ヤクルト3位)が前の試合で出した最速が143キロだった。この比較で平田の速さを実感していただきたい。1人でも多くの先発要員を必要とするDeNAだけに、昨年のヤクルトのように新人3人が活躍する可能性は十分あるとみた。

 新人の新人王予想で名前が出てこなかったのはパ・リーグが楽天、西武、セ・リーグが巨人、中日、ヤクルトの5球団。昨年の優勝チーム、楽天と巨人が揃ってドラフトで即戦力を求めなかったのが私には印象深い。

 過去10年、新人王に輝いた20人の選手たちが所属する球団が優勝したのは昨年の楽天・則本昂大を含めて5回だけ。チームが強くないほうが新人は活躍できる、というのは至極真っ当な結論である。

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