野ボール横丁BACK NUMBER
斎藤佑樹、涼しい顔の裏に変化が。
新球シュートと真っ直ぐな“悔しさ”。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/02/15 08:25
昨年は0勝に終わり、二軍でも失点が続いた斎藤佑樹。故障に回復の兆しが見られる今年4年目は勝負の年。新球シュートで生き残りをはかる。
2つの希望を見た。
2月8日の日本ハムの紅白戦。斎藤佑樹が、今キャンプで初めて実戦のマウンドに立った。
初回、2死一塁の場面だった。1ボール1ストライクからの3球目、斎藤は新球のシュートで5番・鵜久森淳志のバットを根元から真っ二つに折った。打球は完全に死に、三塁ベンチ前へ転がった。
斎藤が、あそこまで豪快にバットを折ったシーンは記憶がない。折ったというより、破壊したという表現がぴったりだった。
斎藤も手ごたえを感じた様子だった。
「あれがシュートの意味ですかね。ある程度、使えると思う」
斎藤が本格的にシュートの習得に乗り出したのは今季からのことだ。これまでにも何度か練習したことはあったが、実戦で使うまでにはいたらなかった。
ただ、斎藤本人は否定したが、「投げられなかった」というよりは「投げたくなかった」のではないか。
シュートとの相性と、斎藤の「理想」。
シュートを覚えるべきだという意見は、早くからあった。入団2年目まで投手コーチだった吉井理人も、シュートを武器に通算251勝を挙げた東尾修(元西武)の名前を挙げて、こう話していた。
「斎藤が成功するイメージは、東尾さんだと思った。外だけで勝負できるピッチャーは限られてますから。オリックスの金子千尋なんてそうですよね。外のストレートと、外のスライダーの出し入れだけで勝負できる。でも、それができるのは、あの真っ直ぐがあるからですよ」
しかしプロ入り当初の斎藤は、モデルチェンジに抵抗があったようだ。それとなく東尾の名前を出したとき、こんな風に言っていたことがある。
「やっぱり本格派の、パワーピッチャーに憧れがある。真ん中に真っ直ぐ投げておけば打たれない。究極じゃないですか」
吉井も、斎藤のそんな気持ちを察していた。
「インコースに投げるのが嫌だというのはわかるんですよね。パワーピッチャーを目指す以上、やっぱりフォーシームにこだわりたいんでしょう」