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恐ろしく密度の濃いストレート負け。
ナダルにあり錦織圭に無いものとは?
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2014/01/21 11:30
「(メジャー大会で身体に)痛いところもなく戦えたことは、昔はなかったこと。身体が強くなっているのを感じています」と試合後にコメントした錦織。
恐ろしいほど密度の濃いラリーだった。
全豪オープン4回戦、第16シードの錦織圭は、男子ツアー随一のストローカー、第1シードのラファエル・ナダル(スペイン)に真っ正面から打ち合いを挑んだ。
両者の前回の対戦は昨年の全仏オープン。全仏のレッドクレー(赤土)と全豪のハードコートでは、ボールの弾み方が大きく違う。ハードコートの特徴である球足の速さを生かすために、錦織は速攻を仕掛けた。一方のナダルも全豪のコートにプレーを適応させて、いつもより低い弾道の速いボールを繰り出してきた。
両者が放つボールの速さ、深さと角度、そして動きのスムーズさが尋常じゃない。思い出したのが、このロッド・レーバー・アリーナ(全豪のセンターコート)で何度も見てきたナダルとノバク・ジョコビッチの激しい打ち合い。ナダルを左右に振り回す錦織の姿に、ジョコビッチが重なって見えた。
ナダルも絶賛した、錦織の技術と勇気。
ナダルが苦しんでいるのは、錦織が勇気を持ってポジションを上げ、ボールを捕らえるタイミングを早めているからだ。
ナダルとの対戦が決まり、「あまり下がらず、前に入って、ジョコビッチがやるようにベースライン上でライジングでしっかり捕らえることができれば」と話した錦織が、その言葉通りのプレーを見せていた。
全仏では、ナダルが高い弾道のボールと球足の長いスライスを駆使して、それを許さなかったが、ハードコートではこの速攻が可能になる。ただし、これは誰でもできることではない。
当のナダルが舌を巻いた。
「彼はテニスで最も難しいとされていることをやってのけるんだ。早いタイミングで捕らえ、しかも打球のコースを変えて展開してくる。それを、いとも簡単にやってみせるのさ」