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恐ろしく密度の濃いストレート負け。
ナダルにあり錦織圭に無いものとは?
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2014/01/21 11:30
「(メジャー大会で身体に)痛いところもなく戦えたことは、昔はなかったこと。身体が強くなっているのを感じています」と試合後にコメントした錦織。
ラリーを支配するが、試合は支配できず。
ナダルを相手に錦織がラリーを支配している。それは見ていてゾクゾクする光景だった。まさに至福の時間だった。
ところが、世界ランク1位は錦織に試合の流れまではコントロールさせてくれなかった。
第1セットはタイブレークにもつれた。
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ここで両者の明暗が分かれる。サーブで圧力をかけるナダルに対し、錦織は得意のサービスリターンのタイミングが合わない。コートサイドに座ったナダル陣営からルールを無視してアドバイスが送られ、ナダルが警告を受けるハプニングもあったが、王者は少しの動揺も見せず、タイブレークを制した。
第2セットも同じような展開になった。
互いに一度ずつサービスゲームを落とし、セットは終盤へ。錦織は5-6からのサービスゲームでミスが増え、ナダルにブレークを許す。その瞬間、ナダルは勝利を決めたかのように雄叫びをあげ、派手なアクションで握り拳を作った。
2セットダウンの劣勢。第3セットも1-3と先行を許す。
以前の錦織なら意気消沈してしまったかもしれない。ナダルを相手に、ここから3セット連取がどれだけ困難なチャレンジか。それを考えれば、心が折れても仕方ない。
しかし、今の錦織は違う。
マイケル・チャンコーチ加入で変わったこと。
マイケル・チャンコーチがストイックなテニスへの取り組みを身をもって示し、錦織のチームに厳しさを注入した。ここであきらめるという選択肢は今の錦織にはない。
体にもまだ余力が残っている。ここまで3試合をこなしたが、どこにも痛みはなく、「体が強くなっている」(錦織)という実感もある。
錦織は再びナダルに挑みかかり、2-4からの相手のサービスゲームをブレークした。さらに4-4から再びナダルのサービスゲームをブレーク。
観客席のボルテージは最高潮に達する。
判官びいきの応援だけではない。錦織が披露したプレーのクオリティが観客の心をとらえていたに違いない。