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恐ろしく密度の濃いストレート負け。
ナダルにあり錦織圭に無いものとは? 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byGetty Images

posted2014/01/21 11:30

恐ろしく密度の濃いストレート負け。ナダルにあり錦織圭に無いものとは?<Number Web> photograph by Getty Images

「(メジャー大会で身体に)痛いところもなく戦えたことは、昔はなかったこと。身体が強くなっているのを感じています」と試合後にコメントした錦織。

2008年以来のセット奪取が近づいたが……。

 5-4で迎えた錦織のサービスゲーム。

 これを守ればナダルからセットを奪うことができる。2008年、クイーンズ(英国)でのナダルとの初対戦時以来のセット奪取が近づいた。

 しかし、またも錦織は仕上げをしくじった。

 30-15と先行しながら、凡ミスを続け、ナダルにブレークを許したのだ。

 タイブレークまで粘ったものの、錦織にセット中盤までの勢いはなく、ナダルのマッチポイント。

 最後は錦織のフォアハンドのボールが力なくネットを揺らした。

今の錦織にとって「善戦」は意味を持たない。

 アリーナを埋めた観客は錦織の退場を大喝采で見送り、大会の公式ウェブサイトは「今大会のベストマッチの一つに数えられる。ストレート勝ち(7-6、7-5、7-6)で決着した試合としては、めったに見られないほど拮抗したものだった」と絶賛した。

 ただ、今の錦織にとって「善戦」は意味を持たない。会見場にあらわれた錦織の表情は、気の抜けた炭酸水を連想させた。

「ここまで来ると、いくらいいプレーをしようと、勝てないとどうしようもない」

 ここまで来ると、とは、彼のツアーにおけるポジションを示している。昨年、世界ランキングを11位まで上げた錦織は、上位陣を直接対決で一人一人倒し、さらに上位にのし上がろうとしている。王者ナダルも当然、ターゲットの一人。善戦で喜んでいる時期は過ぎた、という意味だろう。

 会見でナダルとの距離感について聞かれた錦織はこう答えている。

「近いような、まだまだ遠いような気もしますし、正直、わからないです」

 第1セットのタイブレークや第3セット5-4からのサービスゲームを見ると、両者の隔たりはまだ大きい。ここでの錦織のプレーは凡人のそれだった。しかし、ラリーでは錦織が押している場面も多く、差は縮まっていると見ることもできる。錦織の実感は我々の見立てと重なる。

【次ページ】 「みんな、次のステップに行けると感じている」

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