Jリーグ万歳!BACK NUMBER
柏木、槙野、森脇、そして西川、李。
浦和の“広島化”の裏にあるもの。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2014/01/18 08:15
広島のJ1連覇、天皇杯準優勝に大きく貢献した西川周作。失点数29は全クラブ中最少。56失点の浦和で、来季はどれだけの結果を残すのだろうか。
特徴的なスタイルには、それを熟知した選手が必要。
結果的に「広島化」が進行しているということは、それだけペトロビッチのスタイルが特徴的であるということに他ならない。
GKと3バックは攻撃の起点として正確なパスワークが求められ、最終ラインを少ない人数で構成する分、対人の強さとミスの少なさも求められる。中盤の底でプレーする選手は状況を的確に判断し、最終ラインに組み込まれても攻守両面で機能しなければならない。両サイドにはたった一人でタッチライン際の前後をカバーする運動量と、フィニッシュに直結するチャンスメーク力が求められる。1トップと2列目の2枚はカウンター時に3人で敵陣を切り崩す打開力と、起点となる最終ラインからパスを引き出すセンス、キープ力、そしてそれをゴールに結びつける決定力が問われる。
つまり、各ポジションの適材と言えるプレーヤー像が明確であるからこそ、そのスタイルの仕組みを熟知している選手のほうがハマりやすい。
そう考えると、広島でペトロビッチからこのスタイルを引き継いでさらに完成度を高め、師が成し遂げられなかったJリーグ制覇を2連覇という形で実現した森保一の功績は改めて称えられるに値する。それから、主力を引きぬかれてもそのスタイルを見失うことなく、信じて磨き上げてきた広島の選手たちもだ。
スタイルやアイデンティティが、チームの結果を左右する。
Jリーグを取材していると、選手たちの口からよく聞こえてくる言葉がある。
「自分たちのサッカーができれば勝てる」
「自分たちのサッカーをもう一度見直したい」
「自分たちのサッカーに自信を持って……」
“自分たちのサッカー”、すなわちチームのスタイルやクラブのアイデンティティは、好調時における大きな要因であり、不調時において立ち返るべき場所となる。自分たちのサッカーを明確なイメージを持って確立し、それを疑うことなく実現し続けられる環境を作り上げたことが広島の連覇の要因であり、それが出来なかったことが数年前の浦和が低迷した理由であると言っていい。
もちろんそれは、2012シーズンに大躍進を遂げたサガン鳥栖や、昨シーズンの終盤戦で快進撃を見せたアルビレックス新潟、あるいはあれだけの戦力を誇りながらJ2降格の憂き目を見たガンバ大阪やジュビロ磐田にも共通する。もちろん、揺るぎないスタイルで世界トップレベルを維持し続けるバルセロナや、今季前半戦でまさかの停滞を強いられているミランにも。