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一匹狼がベテランとして再びJへ。
松井大輔が語るジュビロとの“縁”。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNoriko Terano
posted2014/01/19 08:20
やわらかい表情で入団会見にのぞんだ松井大輔。32歳、ベテランとはいえその技術は全くさびついていない。
J1昇格20周年の昨シーズン、J2降格となってしまったジュビロ磐田。1月16日、新シーズンへ向けた新体制発表がヤマハスタジアムで行なわれた。
高比良社長以下、GMに加藤久氏、強化部長に服部年宏氏が就任。フロント陣も新たにスタートを切る。指揮官は大分トリニータで手腕をふるい“シャムスカ・マジック”と言われたペリクレス・シャムスカ氏が就任。鈴木秀人コーチは、服部強化部長同様にチームの黄金期に活躍したOBであり、J1昇格後の現役選手がトップチームのスタッフに就くのはジュビロ磐田では初めてのことである。
新加入は7選手。2人のブラジル人選手と5人の日本人選手だ。明治大卒の小川大貴と筑波大卒の上村岬は共に高校時代はジュビロ・ユースに所属。横浜FCから移籍した森下俊もかつてジュビロでプレーしている。そして、ガンバ大阪から加入した藤ヶ谷陽介も地元磐田東高校出身と、磐田と縁のある選手たちが揃った。
“ベテラン”としての新たな自信を漂わせて。
しかしそんななか、最もメディアの注目を集めたのは、ポーランドのグダニスクから帰国した松井大輔だった。2004年に京都サンガから、フランスのル・マンへ移籍して以降の約10年間を欧州でプレー。2010年のワールドカップ南アフリカ大会で活躍後は、ロシアやフランスリーグ、ブルガリアなどのチームに所属していたものの、成績不振や監督との衝突、怪我などで不本意な日々を過ごしていた。しかし、昨年夏から所属したグダニスクでは中心選手として活躍し、11月に現地で会ったときにも毎日の充実感について話してくれた。
「若い選手が多いから、監督からもチームメイトの手本となるプレーをしてくれと言われる。監督と話す機会も増えて、戦術的なことやチームのことについて、相談されたりすることもある。自分への信頼を感じるし、30歳を過ぎたせいか、自然とチームのことを第一に考えられるようになった。それまでは、まずは自分のこと。自分がいかにプレーできるかを一番に考えていたのにね」
そう穏やかに話す松井の表情には、“ベテラン”としての新しい役割や立場を担い始めた男の自信が漂っていた。思えば2012年秋、ブルガリアで会ったときには「とにかく、俺にボールを寄越してくれればいいんだよ!」というような一匹狼、助っ人としてのオーラを放っていた。「丸くなりたくはない」と尖っているのを松井らしいなと感じたが、ポーランドでチームの支柱として進化し始めた松井に新たな期待を抱いたのも事実だ。
しかし、それから約1カ月後、ジュビロ磐田移籍へのニュースが届いた。