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さよなら、2.4リッターV8エンジン。
2014年からF1は新ターボ時代へ。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2013/12/15 08:01

さよなら、2.4リッターV8エンジン。2014年からF1は新ターボ時代へ。<Number Web> photograph by Getty Images

F1特有の、曇りない純粋なエンジン音は一度聞いたら忘れられない。来年からは、新たな音がサーキットに響き渡ることだろう。

コーナーから立ち上がる音でマシンの差が鮮明に。

 最初は聞き慣れないこのエンジン音に不満を言う人も少なくなかったが、しばらくすると雷鳴のように轟くエンジン音を聞くために、あえてコーナーの立ち上がりへ向かうという現象が起きた。なぜなら、気筒数と排気量、そして最大回転数が決められて以降のF1のエンジン音は、メーカーによる違いがほとんどなくなっていたためである。

 その点、当時のTCSは開発途上にあり、メーカーによる違いが音に鮮明に表れていた。さらにコーナーの立ち上がりでのリアタイヤの滑り具合は、その車体が持つダウンフォース量やメカニカルグリップ力の違いによっても差が出るため、チーム間によるマシンパフォーマンスの違いも確認することができた。

 そのTCSも'08年にエレクトロニックコントロールユニット(ECU)がマクラーレン製に統一され、事実上禁止された。'09年には1万8000回転にまで落とされた2.4リッターV8エンジンだが、'11年になると、再び独特の音色を発するようになる。それはブロウンディフューザーを活用するために開発された地鳴りのようなエンジン音である。

レッドブルのディフューザーが奏でた独特のサウンド。

 ブロウンディフューザーとは排気を利用してダウンフォースを安定的に供給するシステムである。TCSがコーナーの立ち上がりで働くシステムだったのに対して、ブロウンディフューザーはアクセルペダルを踏んでいないコーナーの入口付近でもスロットルが開いたままとなって、強制的に排気し続けてダウンフォースを作り出すシステムだ。空力の考え方の違いやエンジンの制御システムの違いから、排気管の位置がチームによって異なり、音が出るタイミングや音色が違っていたものだった。

 そのブロウンディフューザーも'12年に見直され、ほとんど聞かれなくなったが、レッドブルとルノーは規制の範囲で、その分野の開発を進め、'13年もライバル勢にはない独特のサウンドをコーナーリング中に発していた。

【次ページ】 ブラジルの夜を炎で染めた、V8最後の点火式。

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