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さよなら、2.4リッターV8エンジン。
2014年からF1は新ターボ時代へ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2013/12/15 08:01
F1特有の、曇りない純粋なエンジン音は一度聞いたら忘れられない。来年からは、新たな音がサーキットに響き渡ることだろう。
ブラジルの夜を炎で染めた、V8最後の点火式。
このように、F1のエキゾーストノートは、たとえ規格が同じでも制御の仕方によってシーズンごとに変化し続け、その変化した音に私たちは世界最高峰の技術を耳と肌で感じとってきたのである。それは新しいレギュレーションの下で登場する'14年の1.6リッターV型6気筒シングルターボエンジンになっても変わらないだろう。
'13年の最終戦ブラジルGPのチェッカーフラッグが振られてから3時間半後の夜7時。レッドブルのガレージの前に、黒山のような人だかりができていた。’13年限りで聞き納めとなる2.4リッター自然吸気のV8エンジンへの最後の点火式が行なわれようとしていたからである。その人波の中にはメディアや地元のスタッフのほかにフェラーリやメルセデスAMGら、多くのライバルチームの姿もあった。
ベッテルとウェバーの2人のドライバーによって点火されたエンジンは、レギュレーションの規制を無視して、エキゾーストパイプがオレンジ色になるまで排気口から青白い炎を吹き出し、気持ちよく回り続けた。それはいままで耳にしたことがない2.4リッター自然吸気のV8エンジンの最後の調べだった。