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伝統が進化を促す明治神宮大会。
高校・大学の優勝校を徹底分析。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2013/11/27 10:30

伝統が進化を促す明治神宮大会。高校・大学の優勝校を徹底分析。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

11月16日、関東一戦の9回表1死二、三塁で、センター越えのタイムリー三塁打を放ち三塁に滑り込む沖縄尚学・久保柊人。明治神宮大会での同校初優勝の原動力となった。

一高の歴史に見る、ライバル関係の重要性。

 0-6でリードされた6回裏終了時、明治学院のアメリカ人教師、ウィリアム・インブリーが正門からではなく、垣根を越えてグラウンドに闖入する。この垣根は「俗塵の世と分かつべく画されたる心霊の垣根」と『一高魂物語』で紹介されているように、一高生にとっては神聖なものだった。敗色濃厚の展開も手伝って、インブリーは一高応援団の憎悪を一身に受け、投石などによって顔面を傷つけられてしまう。

 国際問題に発展しかけたこの事件はインブリーのとりなしで終息するが、この試合を観戦していた一高OBの俳人、正岡子規(22歳)ですら「一高は見苦しい」と批判し、一高寮の正史である『向陵誌』などは「悉(ことごと)く謹慎し不日雪辱をなさんことを誓ひたり」とまで書いている。そして、これほど不面目な敗戦がのちの一高野球に劇的な変化をもたらすきっかけになっていく。

 つまり、野球を『校技』と位置づけることによって遊びの感覚を除外し、試合ともなれば全生徒による『全校応援』を督励し、それに応えるため部員は猛練習に明け暮れるという一高野球の伝統が、この敗戦を契機に確立されたのである。

 その後、一高は明治学院と再戦し、26対2の大差で退けると、それから早慶両校に敗れるまでの14年間、日本野球界の頂点に君臨する。ライバル校の存在がいかにチームの進化に寄与するかという好見本で、現代の学生野球に照らしてみれば、東都対東京六大学リーグがせめぎ合う関係に似ている。

 このあたりのことは拙著『野球を歩く』(草思社)に書いたので興味のある方は読んでいただきたい。早慶両校の確執と旺盛なライバル心、高校野球の世界でも横浜高対PL学園、古くは法政二高対浪商など東西対抗的色彩を背景にしたライバル関係があり、そういう対抗意識が大学野球、高校野球を進化させる原動力になってきた。6年ぶりの東都代表校vs.東京六大学代表校による頂上決戦を見て、そんなことをつらつらと考えた次第である。

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