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上原浩治の“出来すぎた”1年間。
38歳の男を支える、等身大の反骨心。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2013/11/10 08:01

上原浩治の“出来すぎた”1年間。38歳の男を支える、等身大の反骨心。<Number Web> photograph by Getty Images

11月2日に行なわれた優勝パレードでファンの声援に応える上原浩治。今シーズンはSNSなどを通じて、ファンとの交流を図ってきた。

上原が語る中継ぎとクローザーの違いとは。

 そんな状況下で投げ続ける上原が、体力を消耗しないわけがない。

 まだシーズン前半の頃から、デーゲームの際に睡眠不足のため疲労感を漂わせ、顔を腫れあがらせてクラブハウスに現われる姿や、雨で試合が中断となり、クラブハウスで必死に仮眠を取ろうとする姿を何度も目撃してきた。

 そしてその度に上原に疲労について尋ねてきた。

「正直、疲れが溜まってます」

「なかなか寝られないんです」

「試合がなくても移動があったら同じです。全然休めない」

 上原にとって中継ぎで投げる精神的な重圧は相当なものだった。ある時、上原が中継ぎとクローザーの違いについて説明してくれたことがあった。

「クローザーの場合、登板場面がある程度わかっているし、3点差あれば2点やってもいいという気持ちで投げることができる。でも今自分が投げている場面は勝っていても負けていても一歩間違えれば相手に流れがいってしまう場面が多い。その流れをこっちに持ってくるためにも絶対に打たれちゃいけないという気持ちで投げてます」

自分を信頼して投げさせてくれるチームに報いたい。

 しかし、上原は苦しい本音を漏らす一方で、締めくくりの言葉は決まって同じものだった。

「大事な場面でずっと使ってくれてもらっているので、疲れたとか言っていられない。投げさせてもらえるだけで幸せなことですよ」

 自分を信頼して投げさせてくれるチームに報いたい──。

 まさに上原がずっと抱き続けた信念だった。だがこの姿勢が、シーズン後半になってさらに上原の負担をさらに増していく結果となった。

 投手コーチ出身のジョン・ファレル監督には、試合前にするある日課がある。

 それは、打撃練習中に外野で球拾いする中継ぎ投手たち全員と会話するということだ。

 この中で投手たちの体調管理や登板についての確認を行なっていた。そして後々のファレル監督の上原に対するコメントを総合すると、上原は指揮官に対し常に前向きな発言を繰り返していたようなのだ。

【次ページ】 上原に命運を託した、禁じ手の「8回投入」。

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