MLB東奔西走BACK NUMBER
上原浩治の“出来すぎた”1年間。
38歳の男を支える、等身大の反骨心。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/11/10 08:01
11月2日に行なわれた優勝パレードでファンの声援に応える上原浩治。今シーズンはSNSなどを通じて、ファンとの交流を図ってきた。
2年前の防御率33.75から、今年は0.66に。
日本のテレビ番組に出演した際、ワールドシリーズ第6戦で最後の打者を打ち取った時の心境を尋ねられ、「もうこれ以上投げなくていいと思った」と話していたが、偽らざる本心に他ならない。
シーズン中も、先を見ずに目の前の1試合1試合を積み重ね、自分に弱音を吐かず、がむしゃらに投げ続けてきたというのが本当のところだ。
ワールドシリーズを制し、チームを代表して上原がヒーローインタビューに立った時、中継を担当したFOXテレビはあるテロップを表示した。
2011→33.75
2013→0.66
2011年と今年のポストシーズンの防御率を比較したものだ。
いうまでもなく2年前にレンジャーズで経験したポストシーズンは、上原にとっては屈辱以外のなにものでもなかっただろう。
実はこの2年前の成績をもとに、個人的にある“仮説”を立てながら今シーズンの上原を取材していた。
年齢的にも、終盤の失速が予想されたが……。
それは、38歳という年齢も加味し、2011年の登板数65試合前後まで投げることはリスクが高いのではないか……というものだった。
だが実際は私の不安とは裏腹に、開幕からフル回転の働きを強いられ、2011年を上回るペースで投げ続けていた。
さらに今シーズンはスケジュールがこれまでとは異なり、2試合だけの交流戦カードが組まれたり、カード最終戦は試合後に移動となるため、通常はデーゲームなのにナイターで行なわれたりと、選手たちの体力的な負担を強いるものだった。
しかもレッドソックスはESPNが中継を担当する『Sunday Night Baseball』のカードに組まれることが多く、この試合は日曜日ながらも唯一東部時間の午後8時に開始されることが義務づけられているため、さらに選手たちの移動を困難なものにしていった。