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上原浩治の“出来すぎた”1年間。
38歳の男を支える、等身大の反骨心。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2013/11/10 08:01

上原浩治の“出来すぎた”1年間。38歳の男を支える、等身大の反骨心。<Number Web> photograph by Getty Images

11月2日に行なわれた優勝パレードでファンの声援に応える上原浩治。今シーズンはSNSなどを通じて、ファンとの交流を図ってきた。

“出来すぎた”今季の反動を懸念するメディアも。

 本人のみならず、誰もが“出来過ぎた”と感じるほどのパフォーマンスを見せた彼に対し、早くも今後の反動を不安視する向きがあるようだ。

 とあるスポーツ紙のサイトで、ボストンの地元紙が報じた2004年のワールドシリーズ制覇に貢献しながら翌年から不調となってしまったキース・フォーク投手の顛末を例示しながら、来シーズンの上原を危惧する原稿記事が掲載された。

 この記事はまったくの考え違いだったのだが、こうした報道が出ることで上原のモチベーションは上がっていく傾向にあるので、ある意味歓迎すべきことなのかもしれない。

 このコラムで今年4月に上原に触れた際、彼の根底に反骨心があることを論じた。

 野球選手としての自分を正当に評価してもらえない苛立ちを、常に自分のモチベーションに変えてきているのだ。

投球フォーム、新たな変化球……。向上心は止まらない。

 さらにメジャー挑戦後も、故障がちだった身体(特に太ももや肩、ヒジ)に負担がかからない投球フォームを身につけるための研鑽を続けているし、真っ直ぐとフォークだけの組み立てに難しさを感じ常に新球習得に取り組んでいる。

 現状に決して甘えようとせず、常に向上心を抱き続ける上原の姿勢を考えると、彼の来季について、不安よりも期待が大きくなってくる。

 年齢にしても同じことだ。周囲が一般常識として38歳という年齢に疑問を投げかけたとしても、上原からすれば等身大の自分をしっかり評価されていないことになる。

「野球は年齢でやるものではない。あと何年やれるかわからないからという理由で契約に影響してくるのもおかしい。もちろん自分が残り少ないのもわかっている。それだけ無駄にしたくはないし、思い切り楽しんでやりたい」

 そして上原は自分をきちんと評価してもらえるように、SNSを通じてファンと直に対話することを心がけてきた。

 自分の成績次第ではSNSの更新を止めてしまう選手も少なくない中で、日々更新を続けファンと真摯に向かい合ってきたこともある意味、彼の反骨心の表われかもしれない。

 幸か不幸か、常に上原の周りには彼の反骨心をみなぎらせる要素が揃っている。否応なしに来シーズンの上原に更なる期待をしてしまうのは自分だけではないだろう。

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