野球クロスロードBACK NUMBER
両チームで対照的な「2勝」の意味。
「スコット鉄太朗」は巨人を支えきるか。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/31 11:45
今年はレギュラーシーズン64試合に登板、防御率は1.22、42ホールドポイントで自身3度目となる最優秀中継ぎ投手に輝いた山口。
リリーフ陣の厚みを増した、指揮官の英断。
その決意が明確に表れ始めたのが、'12年からだった。
この年に加入した、最速160キロのストレートを誇るマシソンを中継ぎに、西村を抑えに抜擢した。そこに絶対的な存在である山口が加わることで、ゲーム終盤を支配する投手陣の厚みがさらに増した。
そこには当然、指揮官の英断もあっただろう。原辰徳監督の言葉がそれを物語っていた。
「選手に『監督は何を考えているんだろう』と思わせてしまうのは不健康です。だから僕は、選手と話をするときに『意思を伝えろ』と言います。その意思と意思とがぶつかり合う時、どんな苦境でも乗り越えられる術が見つかる。健康的な関係になります。我々の一番の目的は勝つこと。これは、そのために必要な作業なのです」
「任されている」ことへの責任感が力に。
山口は、不動のセットアッパーとなれた要因について「監督から『任されている』と責任感を持てるようになった」と言う。今季、球団最多記録となる42セーブを挙げ、守護神の座を絶対的なものとした西村についても、山口はこう分析している。
「健太朗は元から力があったし、『あとは気持ちの問題だ』と思っていました。それが、最近ではいい場面で使われるようになって。あいつも監督の想いを理解して、いい緊張感のなかで投げられているから、いいパフォーマンスを出せているんだと思います」
蹉跌を経ているからこそ、チームは明確な役割を選手に告げられる。指揮官の想いに共鳴した選手たちは、緊張感を責任感に転換させ、マウンドでの躍動を誓う――。
巨人の勝利の方程式「スコット鉄太朗」は、そのようにして生まれたのだ。
楽天打線が猛威を振るおうと、完全に貫けない最強の盾が今の巨人にはある。
そんな最後の一撃を許さない盾の踏ん張りによって、鳴りを潜めている最強の鉾、巨人打線も輝きを取り戻すだろうか。