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楽天vs.巨人、「シリーズ男」は誰だ?
カギは4番の力を引き出すこの“2人”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2013/10/28 12:00
2007年から主将を務める阿部。今年はWBCでも主将、4番、正捕手を務め、シーズンでは32本塁打を記録した。
両軍にとって、日本シリーズ2試合を終えた時点で1勝1敗は想定内の結果だろう。
巨人は、エース・内海哲也の好投など投手陣の奮闘が光り初戦を2対0で勝利。第2戦の菅野智之は6回途中1失点、フォークを決め球に6つの三振を奪いCSからの好調ぶりを披露した。チームは1対2と敗れはしたものの敵地で連敗しなかった。そして、内海、菅野の両先発をシリーズ終盤でも投げさせられる計算が立ったことは、巨人ベンチにとって大きな収穫だったはず。
楽天はまず、先発起用から攻めに出た。第1戦は、中4日でマウンドに上がった則本昂大が敗戦投手となったものの8回2失点の好投。第2戦では田中将大が12奪三振の圧巻の投球で巨人打線を圧倒した。中4日で田中をマウンドに出したくない。今季無敗の絶対エースで初戦を落とすようなことがあれば、次戦以降に響く……。短期決戦でよく言われる「第2戦重要論」を地で行くような采配で、楽天は最低限のイーブンで2試合を終えた。
ここまで投手戦が続いているが、第3戦以降も緊迫した展開が続くとは限らない。どこかで必ず訪れる打ち合いを制していかなければ、頂点を勝ち取ることはできないのだ。
そうなると、どうしても「打線のキーマン」の存在が必要不可欠になる。
頂上決戦で必ず現れる「シリーズ男」、今年は……?
頂上決戦では必ずと言っていいほど、「シリーズ男」なる選手が現れる。だが、ここまでの2戦を振り返れば、まだ決定的な打線のキーマンは両軍ともに出てきていない。
しかし、打線の起爆剤となる選手。もっといえば、「シリーズ男」へのお膳立てを生み出しそうなパフォーマンスを見せた選手は、確かにいた。
巨人ならそれは、3番の阿部慎之助になる。
日本シリーズにおけるチームの最重要選手であり、相手の徹底マークが確実視される男。第2戦が終った時点で4打数無安打、4三振。4四死球と出塁こそ多いが本来の打撃は鳴りを潜めたまま。「逆シリーズ男」と囁かれてもおかしくない状況ではある。
だが、数字だけでは測れない阿部の価値は、間違いなく存在していた。
第1戦でクローズアップしたいシーンは、8回の第4打席。阿部は則本と嶋基宏バッテリーの巧みな配球に翻弄される。ストレートはボールゾーンに。シーズン中に多投しなかったカーブでカウントを取りつつ、同じ球種をきわどいコースに投げさせる――。
この打席で阿部は、空振り三振に倒れた。しかしそれが、直後の村田修一の本塁打を呼んだことも事実なのだ。
村田が打ったのは、真ん中寄りに入った外角のストレート。楽天バッテリーが阿部に集中しすぎたことが、村田への初球の入り方を甘くした。結果がそれを物語っているではないか。