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楽天vs.巨人、「シリーズ男」は誰だ?
カギは4番の力を引き出すこの“2人”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2013/10/28 12:00
2007年から主将を務める阿部。今年はWBCでも主将、4番、正捕手を務め、シーズンでは32本塁打を記録した。
「僕が打てれば勝てるし、打てなければ負ける」
第2戦では、両チーム無得点で迎えた6回の四球を挙げたい。
田中-嶋のバッテリーは、初球からスプリットを中心にひたすら低めのボール球で勝負したが、5球も同じコースを続ければさすがの阿部も見極める。7球粘っての四球。続く村田のセンター前ヒットなどで2死満塁と、チャンス拡大の足掛かりを作った。結果的に田中にその芽は摘まれてしまったが、大量得点の場面を演出したのは紛れもなく阿部だった。
阿部はここまで、ほとんどストライクゾーンで勝負をさせてもらえていないが、2試合で楽天投手陣に投げさせた球数はチームトップの37球。それはつまり、相手が阿部を警戒している何よりの証拠である。
シリーズ開幕直前に阿部は、「僕が打てれば勝てるし、打てなければ負ける」と語っていた。無安打の現実はある。しかしこの2戦を通じ、存在感だけでも十分に勝負できることを証明した。
阿部の存在が村田への負担を軽減する。3番が火をつけ4番が爆発させる。シリーズ男誕生の図式としては実に理想的である。
楽天のリードオフマン、岡島豪郎の可能性。
球数という視点から言えば、阿部とは異なるアプローチで相手にダメージを与える選手が楽天にもいた。
1番の岡島豪郎。今季レギュラーに定着し、規定打席未到達ながら打率3割をマークした男は、2試合でチームトップの44球、1打席で平均すると、約5球も巨人投手陣にボールを投げさせている。
もともと、積極的なリードオフマンだ。それは、初球を果敢に振りに行った第1戦の初回の打席でも窺える。
シリーズでは、そこに粘りも加わった。顕著に表れていた場面が7回の第4打席。2死二塁の場面で、カウント2-2から4球連続、計6球もファウルした末に四球を選んだ。
初戦は4打数無安打。それでも岡島からすれば、「(バッティングの)感じは悪くなかったから、焦りはなかった」という。その打撃意識は、第2戦での彼のパフォーマンスを見れば十分に頷けた。