Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和、川崎を圧倒してナビスコ決勝へ。
「奪う力」で取り戻した理想のサッカー。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2013/10/17 10:30
攻撃力こそが浦和の最大の武器だが、その武器を生かすためにも守備の意識は必須。ハードワークを厭わないテクニシャンは、強い。
まさかここまで一方的なゲームになるとは、想像がつかなかった。浦和レッズ対川崎フロンターレのナビスコカップ準決勝のことだ。
川崎が3-2で先勝して迎えたナビスコカップ準決勝の第2戦は、浦和が1-0で勝利し、トータルスコアは3-3。アウェーゴール数が多い浦和のファイナル進出が決まった。
川崎のGK杉山力裕が“当たって”いたため、興梠慎三によるこの日唯一のゴールが生まれるまでに80分もの時間を要したが、シュート数18対6、決定機の数8対1、ボール支配率63%対37%といったデータが示すように、浦和が川崎を圧倒し続けた90分だった。
中央では柏木陽介や興梠の足もとにくさびのパスが面白いように入り、サイドでは平川忠亮と宇賀神友弥が高いポジションを取り続けたばかりか、2人のストッパー、槙野智章と森脇良太までもがフィニッシュへと持ち込んだ。
フリックパスをはじめ、攻撃のアイデアにおいても申し分ない出来で、「私が浦和に来てから最も良いゲームだった」というペトロビッチ監督の言葉にも、うなずけた。
なぜ、これほどまでに浦和の攻撃は冴えたのか――。その原動力を考えたとき、浮かび上がってくるのは、「ボールを奪う力」だ。
つなぐどころか、ロングフィードも蹴らせない。
ボールを失った瞬間に「攻」から「守」へとギアを入れ替え、川崎のボールホルダーに襲いかかる。相手にパスをつなぐ時間を与えないどころか、カウンターを発動させるロングフィードすら蹴らせまいと、プレッシャーを掛けていく。
まるで「俺たちの大事なボールを返せ」と言わんばかりに追いかけて、相手陣内で囲い込み、ボールを回収していった。柏木が言う。
「自分が今まで理想としていた守備ができたと思う。このやり方が一番チームを強くすると思っていた。90分を通して、そこで取って二次攻撃、三次攻撃につなげることができた。それが今日の勝利につながったと思う」
こうした「ボールへの執着心」と「切り替えの意識」がチーム全体に浸透していたのには理由がある。キーワードは「6秒間」だったと、原口元気が説明する。