プロ野球亭日乗BACK NUMBER
来季のクローザーは若手にスイッチ?
守護神・岩瀬仁紀が迎える正念場。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/12/15 10:30
4年契約の3年目となる来季の契約を現状維持の4億3000万円で更改した岩瀬。巨人の小笠原道大と並ぶ日本球界最高年俸に見合う活躍を見せられるか(金額は推定)
ハッとした場面だった。
今年の日本シリーズの第4戦。延長11回表に中日が1点を勝ち越し、その裏のロッテの攻撃だった。
守護神投入の場面。
しかし、中日の落合博満監督は絶対守護神の岩瀬仁紀投手ではなく、10回1死から登板していた左腕・高橋聡文投手を、そのまま続投させてマウンドに送った。
ただし、ハッとしたのはこの続投の場面ではない。
高橋が代打の細谷圭内野手を二飛に打ち取り、8番の里崎を三振に仕留めた。2死。ロッテは代打をほとんど使い切って9番・岡田幸文外野手に打順が回った場面で、中日ベンチが動いたことだった。
1点リードの延長11回2死無走者、打席には9番打者――この場面になって初めて、落合監督は岩瀬をマウンドに送り込んだのだ。
11回2死の場面で岩瀬に交代させた落合監督の真意とは?
「最後は岩瀬」
これは落合監督が就任以来、貫いてきた方針だった。
それを強烈に印象づけたのは、2007年のシリーズで完全試合目前の山井大介投手から、9回に岩瀬にスイッチした継投だった。
この交代に賛否はあった。
「あそこでマウンドに上がって、平然と3つのアウトをとってきた岩瀬をもっと評価すべきだ」
ただ、落合監督が語ったこの言葉には、文句のつけようのない説得力があった。
だからこの延長11回の場面でも「最後は岩瀬」なのか……。
それは違うことは断言できる。
このシチュエーションで岩瀬に継投する必然性は、一つもない。同じ左腕。左の岡田だからという理由も当てはまらない。回の頭から岩瀬に投げさせないのならば、最後も高橋の続投で何の問題もないし、その方が自然だったはずだ。ただ「最後は岩瀬」という言葉にこだわって、ムリやり岩瀬をマウンドに引っ張り出したような継投としか映らない。
逆に、あの場面でマウンドに上げられた岩瀬の気持ちはどんなだったのだろうか?
落合監督がもはや岩瀬を絶対と考えていない、少なくともあの日本シリーズではそう考えていなかった、ということを天下に知らしめるための継投としか思えない。だからあの場面で岩瀬を投入したことに、ハッとしてしまったのだった。