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降格3チームに欠けていたのは何か?
J1残留争いの全ての流れを検証する。
text by
猪狩真一Shinichi Igari
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2010/12/08 10:30
石川、梶山、今野、権田、平山、森重など日本代表レベルのタレントを多く揃えたFC東京だったが無念の降格。シーズン半ばで解任された城福浩前監督は、いま何を思うのか……
湘南、京都、そしてFC東京。34節の長い戦いを終え、J2降格を余儀なくされたのはこの3チームだった。最後には16~18位というボトム3に顔を並べながらも、開幕前の下馬評には差があった彼ら。その戦いから、2010年のJ1の残留争いを振り返ってみたい。
1シーズン18チーム制となった'05年以降では、'07年の横浜FCと並んで最少タイの勝点16にとどまり、1年でJ2へと舞い戻ることになった最下位の湘南。11年ぶりのJ1の戦いは苦渋に満ちたものとなったが、それは大方の予想からかけ離れたものではなかった。
J2からの昇格組がJ1の戦いに臨むに当たっては、大きく分けてふたつの考え方がある。ひとつは、スタメン格の選手の補強を最小限にとどめ、昇格レースのなかで熟成された選手間の連係=組織力を最大限に活かす方策。もうひとつは、レベルの上がるJ1の戦いに向けて積極的にタレントを獲得し、チームの再構築を行いながら戦うという方策。今季で言えば、湘南、仙台は前者を採り、C大阪は後者を採った。
大黒柱の離脱をカバーできずバージョンダウンした湘南。
だが現実には、湘南は昨季のチームをそのままJ1に持ち上げることすらできなかった。彼らの最大の強みは、結果を出し続けて醸成されていったメンタル面のしぶとさにあり、戦力的にはJ2でも飛び抜けた存在ではなかった。にもかかわらず、攻撃の大黒柱だったアジエルを開幕前に故障で失ったうえに、現有戦力とさほど能力差のない選手を数名獲得したのみ。その他にも主力にケガ人が相次ぎ、個の能力の総和でもチームとしての完成度でも、昨季より劣った状態でシーズンに突入することになったのだ。
そして、結果を出せないまま選手の自信が失われ、メンバーを固定できずに連係の熟成もままならない状況が続くと、個の能力差を補う術は消えた。ホーム最終戦でC大阪に大敗を喫した後、反町康治監督は「今年バージョンアップしたチーム(C大阪)と、逆にバージョンダウンしたチーム(湘南)との差があったかなと思う」とコメントしたが、確かに湘南は、J2時代より“弱く”なっていた。
昇格組で湘南と同じ方策を採り、最終節できわどく残留を決めた仙台が、もしリャン・ヨンギを1シーズン丸々失って戦うことになっていたら、同じ結果が待っていた可能性は高い。とはいえ、彼らは最低限、フェルナンジーニョという計算できるタレントの獲得という手は打っていた。予算の差と言えばそれまでだが、湘南にはそうしたリスクヘッジ的な補強策もなかった。