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降格3チームに欠けていたのは何か?
J1残留争いの全ての流れを検証する。
text by
猪狩真一Shinichi Igari
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2010/12/08 10:30
石川、梶山、今野、権田、平山、森重など日本代表レベルのタレントを多く揃えたFC東京だったが無念の降格。シーズン半ばで解任された城福浩前監督は、いま何を思うのか……
京都の降格は秋田監督の経験不足だけが理由ではない。
湘南より1勝多いだけの勝点19で17位に沈んだ京都は、史上最多となる4度目の降格。ディエゴや水本裕貴といった実力者を擁し、戦力的には、昨季の12位と同じ中位程度を予想する向きも多かった。
しかし、開幕前から不安要素はあった。4シーズン目を迎えた加藤久監督の戦術は、目の前の相手にどう対応するかという側面が強く、試合ごとにメンバー構成もシステムもくるくると変わるもの。もちろん、そうしたスタイル自体には是も非もないが、精神的に苦しくなったときに立ち戻れるベースがなかったことも事実だった。そして今季の前半戦、10戦未勝利と負のスパイラルから抜け出せなくなった時点で、フロントは監督交代を決断する。
だが、そこでフロントが打った手は、およそ好手とは言いがたかった。京都で2年半のコーチ経験を積んだにすぎない秋田豊コーチを監督にスライド昇格。しかも、降格危機に陥ったクラブの大半が行う監督交代とセットでの戦力補強も皆無で、経験豊富なコーチを補佐役に据えることもしなかった。
過去、降格危機のさなかにあるチームが、トップチームを率いた経験を持たないコーチの内部昇格で立ち直った例はきわめて少ない。実際、今季の京都も、秋田監督の就任以降の20試合で得た勝点は、加藤監督が率いた14試合で得た勝点を下回った。それは秋田監督の資質がどうかという問題ではなく、フロントがそれだけ無理のある手を選んだということだ。
例えば、早々とチャン・ウェリョン監督の解任を決め、山形、新潟での指導実績を持つ鈴木淳監督を招き入れた大宮は、同時期にイ・チョンス、イ・ホ、鈴木規郎らの獲得も行い、ぎりぎりではあったが残留を決めた。結果がどうなったかは別にして、京都も同じ道を選ぶことは可能だった。
大黒の獲得、監督交代。人事を尽くしたFC東京だったが……。
だが、あらゆる事象がそうであるように、確率の高い道を選べば成功が得られるわけではなく、難しい手を選んでも失敗するとは限らない。最終節で明暗を分けたFC東京と神戸は、その逆転が起きた例とも言える。
昨季、石川直宏の大爆発もあって、リーグ戦5位&ナビスコ杯優勝という好成績を挙げたFC東京は、城福浩体制の3年目となった今季、優勝候補の一角に数えられていた。だが、ボランチ米本拓司の故障による開幕時からの長期欠場などもあって、チームのバランスが崩れ、前半戦から苦しんだ。
W杯ブレイク中には、ゴール前までボールは運べているがフィニッシャーがいないという課題を解消するため、横浜FCでゴールを量産していた大黒将志を獲得。補強は理にかなっているように思えたが、W杯後の長友佑都の海外移籍も影響してか、得点力不足は解消されなかった。そして、9戦未勝利となった9月18日の磐田戦後、フロントは城福監督の解任を決定。J参入時代の指揮官であり、日本代表のコーチも務めた大熊清に後を託した。