JリーグPRESSBACK NUMBER
降格3チームに欠けていたのは何か?
J1残留争いの全ての流れを検証する。
text by
猪狩真一Shinichi Igari
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2010/12/08 10:30
石川、梶山、今野、権田、平山、森重など日本代表レベルのタレントを多く揃えたFC東京だったが無念の降格。シーズン半ばで解任された城福浩前監督は、いま何を思うのか……
首の皮一枚で残留した神戸とFC東京に力の差は無い!?
一方、同じく降格危機にあった神戸は、その1節前に、三浦俊也監督の解任と和田昌裕ヘッドコーチの監督昇格を決めていた。タイミングはほぼ同じで、昨季5試合で指揮を執った経験を持つだけのコーチの昇格。しかも、エース大久保嘉人が戦列を離れ、大黒のような実績ある選手のシーズン半ばでの補強もなかった。だが結局、生き残りに成功したのは神戸の方だった。
10人で清水から勝点3を奪取してみせるなど、ラスト7戦を4勝3分で駆け抜けた神戸のラストスパートは鮮やかだった。網を張って自陣で待ち受ける三浦監督時代のスタイルから、かつての松田浩監督時代を思わせる、前線からの猛烈なプレスとショートカウンターへの切り替えが、選手の旺盛な闘争心とぴったりハマったことは間違いない。しかし、和田監督就任後の12戦で4勝5分3敗という神戸の成績と、大熊監督就任後の11戦で4勝3分4敗というFC東京の成績には、ほとんど差はない。最終節前の山形戦、86分の同点ゴールを許していなければ、FC東京の残留はほぼ決していた。
残留と降格という決定的な違いが残ると、FC東京が抱えていた問題はことさら大きく映り、神戸は打った手がすべて正解だったかのように見える。
だが言うまでもなく、それは錯覚だ。
今季の降格3枠目を巡る争いには、後付けの因果関係の介入を許さない迫力があった。
昇格組の柏、甲府、福岡も喜んでばかりはいられない。
そして、降格する湘南、京都、FC東京に代わって、来季のJ1の戦いには、柏、甲府、福岡の3チームが加わる。
堅牢な守備組織の構築から入り、昇格レースを戦うなかで攻撃力アップにも成功した柏は、戦力的にも十分中位を狙える存在。また、ハーフナー・マイクを筆頭に強力なFW陣を擁し、ショートパス偏重型からタテに速い攻撃スタイルにシフトした甲府は、守備陣の補強が残留のためのポイントになりそうだ。そして、彼らとは異なり、完全なノーマークから昇格を果たした福岡は、今季の湘南と似た立場。残留のためには、永里源気や中町公祐といった若手の勢いを維持しつつ、違いを作り出せるタレントを加える必要がある。釈迦に説法だが、今季の残留争いから学ぶべきことは大いにあるだろう。