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新戦力筆頭は柿谷ではない!?
観察力と吸収力の男、工藤壮人。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO

posted2013/10/01 10:31

新戦力筆頭は柿谷ではない!?観察力と吸収力の男、工藤壮人。<Number Web> photograph by Kenzaburo Matsuoka/AFLO

グアテマラ戦で試合の流れを決定づける追加点を奪った工藤。A代表は現在4試合で2得点。あらゆる形でゴールに絡む能力は、数字にもはっきり残っている。

プロ1年目、大きな影響を受けた北嶋秀朗との出会い。

 指揮官の「ウチのチームは左右のワイドの選手がゴールを獲ってきている」という言葉を胸に刻み、工藤は右サイドの位置からゴールにこだわろうとしてきた。東アジアカップの中国戦でも1ゴールを決めているが、印象深かったのは途中出場ながらゴールを挙げた先のグアテマラ戦だ。

 左サイドで崩して、右サイドが仕留める。

 工藤はチャンスと見るや右サイドから中に入ってきて左足で強烈なシュートを放ち、それで得た右のショートコーナーから香川のグラウンダーのパスに体ごと突っ込んで合わせている。工藤らしいゴール、ザックジャパンらしいゴールへの帰結だった。

 見て学んでスポンジのように吸収するという工藤の特性は、何も今に始まったものではない。

 彼は柏レイソルU-18から昇格した1年目(2009年)は3試合の出場にとどまり、チームがJ2に降格した2年目のシーズン序盤もレギュラー争いに食い込めなかった。

 練習ではもちろんのこと、ケガで別メニュー調整になってもスタメンで出ている選手の動きを見ようとした。特に影響を受けたのが北嶋秀朗の存在だった。

 昨年にインタビューした際は、こう言っていた。

「自分が感覚だけでシュートを打っていることに気づかされたんです。相手のゴールキーパーやディフェンダーの重心というか矢印を考えて打ってなかった。北嶋さんはそこを考えてプレーしていました。背後の取り方だったり、下りてボールを受ける駆け引きだったり、僕は一人で持っていけるタイプではないので本当に参考にさせてもらった。クロスに対する入り方なんかも北嶋さんの影響をかなり受けています」

「オカさんより上回っているところだってある」

 相手との駆け引きの巧さは、まさに北嶋譲り。その上で生まれたゴール前の落ち着きと、シュートのバリエーションの豊富さは、今では“本家”を凌ぐほどになってもきている。

 貪欲に学ぶ、自分に取り入れる。

 代表では8、9月の合宿で岡崎の動きをしっかりと見ようとしていた。たとえ出場機会がなくとも、モチベーションが落ちることはなかった。ガーナ戦の前には、こんな発言もしている。

「オカさんは動き出し、キープするところ、ファーストタッチのボールの置きどころとか、プレッシャーの速い海外で身につけたような感じで見ていますし、代表でも波のないプレーをするわけで、僕自身が見習わなきゃいけない部分だと思ってます。そういった選手が活躍できると思うので。ただ、オカさんより上回っているところだってあると思うんです。ダイアゴナルで抜けていく質であったり、ゴール前での冷静さであったり。そういうところでは負けない自信も持ってます」

【次ページ】 「北嶋っぽい、岡崎っぽい」を越えてオリジナルに。

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