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岩隈の交渉決裂状態は必然か!?
ポスティング制度の歪んだ現実。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/11/28 08:00

岩隈の交渉決裂状態は必然か!?ポスティング制度の歪んだ現実。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

ファンへの別れの挨拶は正式契約以降と決めていた岩隈は、ファン感謝デーでもセレモニーは行なっていなかった。来季も楽天に残留することが濃厚だというが……

止まらぬ選手流出の見返りに大金を求めた日本球界。

 メジャー各球団は争って日本人選手獲得に走り、その頂点となったのが、総額100億円といわれた松坂の移籍だった。

 このときに西武が入札金として手にしたのが当時のレートで約60億円。

 同年には阪神から同じポスティングで井川慶投手がヤンキースに移籍したが、その入札金が約30億円……。選手の移籍にもはや歯止めをかけられないとみた日本球界も、逆に選手を “売る”ことによって大金を手にするバブルの夢を見るようにもなっていた。

 ごくごく簡単に言ってしまえば、選手を金で買いあさるメジャーと、選手を売って途方もない見返りを得ようと画策する日本の球団(メジャーと契約することで破格の年俸を手にする選手)――この構図で成り立っていたのが、ポスティングという制度だったわけだ。

米経済の不況で思惑が外れてきたポスティング制度。 

 だが、野茂英雄投手やイチロー、松井秀といった選手に比べて、その後の選手が必ずしも期待通りの活躍ができなかったことで、日本人選手への米球界の評価もかつてほど高くはなくなった。しかも、リーマンショック以降の米経済の構造不況で、球団の資金面も潤沢でなくなっている。

 ポスティングの成り立ちを考えれば、もはや日米球界の思惑からは外れ、役目は終わり、むしろ歪んだ制度となってしまったと見ることもできるかもしれない。

 今回の岩隈のケースでクローズアップされるのは、当初からアスレチックスが岩隈獲得に“本気”だったのか、という点だ。

 実は入札段階からアスレチックスは岩隈と契約したら、すぐにトレードに出すという裏情報が駆け巡っていた時期があった。また、今回の交渉決裂で他チームが入札するのを妨害するためにあえて高額で入札したという情報もささやかれている。

 独占交渉権獲得後に交渉が決裂した場合は、入札金を支払う必要はないし、その選手は翌年11月1日まで同制度での移籍はできなくなる。アスレチックスに「損」はないというわけだ。

 もちろん日本側にも歪みはある。

 それはこの制度の行使が、やはり球団の恣意に委ねられている点なのだ。

【次ページ】 ポスティング制度の諸問題が日本球界を歪めていく!?

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岩隈久志
オークランド・アスレチックス

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