プロ野球亭日乗BACK NUMBER
岩隈の交渉決裂状態は必然か!?
ポスティング制度の歪んだ現実。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/11/28 08:00
ファンへの別れの挨拶は正式契約以降と決めていた岩隈は、ファン感謝デーでもセレモニーは行なっていなかった。来季も楽天に残留することが濃厚だというが……
やはり歪んだ制度、ということか……。
楽天・岩隈久志投手とポスティング制度による入札で独占交渉権を手にしたオークランド・アスレチックスとの入団交渉が、暗礁に乗り上げている。
岩隈の代理人の団野村氏は、自身のツイッターで「アスレチックスからのオファーは1年平均381万ドル(約3億1750万円)、4年1525万ドル(約12億7000万円)だった」と暴露。また入札額は「1910万ドル(約15億9000万円)」と明らかにした。
これに対して岩隈側は、2006年に同制度でボストン・レッドソックスに移籍した松坂大輔投手並みの平均年俸約850万ドル(約7億円)をベースに要求しているようで「向こうの金額に『ノー』と言い、ボールを投げ返してくるのを待っている」と野村氏は現状を説明している。
ポスティング制度発足時、米球界はまだバブル景気だった。
岩隈の入団交渉が決裂すれば、もちろんポスティング制度ができて以来12年目で、初めての出来事になる。ただし、ここ数年の日米球界の状況を考えると、いつ起こってもおかしくない“悲劇”の最初の主人公が、どうやらこの岩隈だったということのようだ。
そもそもこの制度ができた理由は、メジャーでプレーしたいという選手の「夢」に乗っかる形で、「選手が欲しい」米球界と「どうせ選手を出すならお金が欲しい」日本球界の思惑が一致したことだった。
制度ができた1998年前後の米球界は、まだまだバブル景気に沸き、'00年にはテキサス・レンジャーズがアレックス・ロドリゲス内野手と10年総額2億5200万ドル(当時のレートで約300億円)という途方もない契約を結ぶ時代だった。
しかも'00年オフにはオリックスのイチロー外野手が同制度でシアトル・マリナーズに移籍。1年目に打率3割5分をマークして新人王を獲得するなど目覚しい活躍をみせた。
その後もフリーエージェント(FA)での移籍だったが、マリナーズ・佐々木主浩投手やニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜外野手の活躍で日本人選手への評価がうなぎ上りとなっていった。