自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
東京湾岸をひたすら東へ、幕張へ。
「未来都市」のあるべき姿とは?
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/11/20 08:00
幕張に見る「過去の未来」。
さあ、幕張に着いた。幕張は相変わらずピカピカときれいだ。居並ぶ高層ビル群、広い道路、行き過ぎる大量のクルマ。それらを見ながら、私は、ふと思った。
あれ、なんでクルマにタイヤが着いているんだろう……?
何のことかというと、幕張という街には「エアカー」が似合うという気がしたのだ。エアカーというのは、つまり車輪のない「空飛ぶクルマ」のことで、私の少年時代、21世紀のクルマはみんなこのクルマになるとされていた。
手塚治虫のSF漫画にも「未来都市」を標榜する図鑑にも、必ずこのエアカーは出ていたものだ。21世紀には、こういうクルマが普通に走っていると。
そうそう、そういうことを思っていたのは、日本人だけじゃないよ。'85年に“パート1”が封切られ、特大のヒット映画となった「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ。あれのパート2で描かれた「未来」(ビフが地元の親玉になってるイヤな未来でありますね)だって、設定は2015年、つまり今からわずか5年後なんだそうだ。
その「未来」には、おお、やはりエアカーがぶんぶん飛び回っている。あろうことかスケボーすら、車輪でなくエアカー版となり、整形手術の技術が進んで、みんな若いままの姿形となり、テレビは薄型大画面となった。
実現したのは最後のヤツだけだ。
過去の人々が、そうであろうと思った未来は、現実となりはしなかった。
しかし、代わって誰もが携帯電話をもち、パソコンをいじり、ほぼすべての情報がネットで繋がる、別の未来がやってきたのだ。
そういう現代の目で、幕張を眺めると、おや、幕張は何だか懐かしい。少年時代のあの図鑑に描かれた「未来の姿」から、エアカーを引き、空を縦横無尽に結んでいた透明チューブ(舗道)を引くと、それが幕張になる。
伸びゆく高速道路、広い車道、細かく木々が剪定された美しい公園、数々の高層ビル。しかし、そこには自転車レーンはない。露出した土もない。車椅子や視覚障害者にとって安全な舗道が、ない。