セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
大物が移籍でセリエAに続々集結。
復権の先鋒はユーべかそれとも……。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/08/16 10:30
ジョレンテ(右)とテベス。2人の本格FWを獲得し欧州の頂点に照準を合わせたユベントス。しかし今季のセリエは彼らに独走を許すほど簡単なリーグにはならないだろう。
本田圭佑はセリエAの“ストラニエーロ”に名を連ねるか。
大型補強といえば、ローマも無視できない。次代のオランダ代表を背負って立つMFストロートマンを総額2000万ユーロで競り落とすと、ブラジル代表復帰を狙うDFマイコンをイタリアへ帰還させた。さらにアーセナルからFWジェルビーニョ引き抜きにも成功。残るはクラブ史上初のフランス人新監督ガルシアの采配次第だ。
昨シーズン9位の低迷から巻き返しを図るインテルは、イカルディ(アルゼンチン)とベルフォディル(アルジェリア)の新若手FWコンビに託す。
フィオレンティーナは、欧州王者バイエルンからFWマリオ・ゴメス(ドイツ)を獲得した他、元スペイン代表MFホアキン・サンチェスなど技巧派を次々に揃えた。1年目の昨シーズン、4位躍進を果たしたモンテッラ監督には、すでに気心知れたMFボルハ・バレロらがおり、緩急自在のパスワークから多重アタックを繰り出すスタイルを熟成させたいところだ。
ミラン入りは今冬にお預けとなりそうな本田圭佑(CSKA)も、セリエAを彩る“ストラニエーロ”たちとの競演に期待したい。ミランの今夏補強は守備陣のテコ入れのみに留まりそうだが、ミランはバロテッリやエルシャーラウィといったイタリア代表のアタッカーを抱えるのが強みだ。ブラジルW杯のプレシーズンともあれば、彼らアズーリ組が外国人来襲にも黙っているはずがない。
御大アリゴ・サッキは「セリエAに外国人が増えすぎではないか。もっとイタリアの若手に経験を積ませよ」と警鐘を鳴らす。ただ、FWインシーニェ(ナポリ)ら今夏の欧州選手権で準優勝したU-21世代は、すでに頼もしい活躍を見せている。
混戦の気配から甦る、大番狂わせの記憶。
'80年代初頭、世界中の一流選手たちは、我先にとイタリアを目指した。'82年にプラティニがユベントス入りすると、'83年にはジーコがウディネーゼへ。そして翌'84年、ナポリのマラドーナ時代が幕を明けた。
29年前の夏も、選手の大移動が起こった。インテルにはFWルンメニゲが、フィオレンティーナにはMFソクラテスが加わっている。
しかし、実力拮抗の千両役者ばかりが揃った'84-'85年シーズンのセリエAを制したのは、まさかのベローナだった。
監督バニョーリに率いられた地方チームは、開幕戦でナポリ相手に快勝するとそのまま快進撃を続け、古都にスクデットをもたらした大番狂わせの主役になった。
ベローナでは今季、キエーボとのダービーが復活。今季は史上最多5大都市でのダービーマッチが実現。トリノ(ユベントスvs.トリノ)、ミラノ(インテルvs.ACミラン)、ジェノバ(サンプドリアvs.ジェノバ)、ベローナ(ベローナvs.キエーボ)、そしてローマ(ASローマvs.ラツィオ)のダービーマッチは、'80~'90年代のセリエAにあった熱気を取り戻す起爆剤になるだろう。
見所満載の今シーズン、セリエAは復権に向けて胎動を始める。