リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
固定化するリーガの「2強とその他」。
予算差15倍に想像力で抗う心意気!
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byDaisuke Nakashima/AFLO
posted2013/08/20 10:31
王者バルセロナに対して弱者の戦いを見せたレバンテだったが、7-0のスコアは残酷な現実を表していた。目線の異なる様々なクラブが共存するのがリーガの魅力でもあるのだが……。
21歳のブラジル人獲得に払った額は5700万ユーロ(約74億円)。23歳のバスク人には3800万ユーロ(約49億円)。21歳のスペイン人には3000万ユーロ(約39億円)。
ああスペインは不況を脱したんだなと思われそうな数字だが、そんなことはない。6月の失業率は26.3%。25歳未満に絞ると56.1%。ユニフォームの胸スポンサーを見つけられないまま開幕を迎えたのは5チームだから、9チームもあった2年前よりはマシになっているが、国もクラブも依然火の車である。ネイマールやイジャラメンディやイスコに大金を払ったのはバルサとマドリーであり、両者は別世界に属しているのだ。
実際、2強とその他の経済格差は大変なことになっている。クラブの収入源を「入場券」、「テレビ放映権」、「マーケティングその他」に分けると、たとえば'10-'11シーズンのバルサはそれぞれ1億1070万ユーロ、1億6300万ユーロ、1億7690万ユーロを懐に収めた。マドリーは1億7420万ユーロ、1億5600万ユーロ、1億4910万ユーロである。一方で、総収入が3番目に多いバレンシアは5190万ユーロ、4200万ユーロ、2580万ユーロ。
文字どおり桁が違う。
移籍市場は夏の花火。金額が大きいほどワクワクする。
前述のスポンサーにしても、「入場券」や「テレビ放映権」が効くので、2強が困ることは決してない。ローカル企業でもない限り、たいていは僅かな人しか目にしない地元チームのユニフォームの胸ではなく、巨大なスタジアムを持ち、メディアにしばしば取り上げられる有名チームの“片隅”を選ぶからだ。弱小クラブにとっては救いのない悪循環である。
それはさておき、補強の話に戻ると、バルサやマドリーの他は今年も財布の紐が堅い。開幕の時点で、最高額はアスレティックがベニャ獲得に費やした800万ユーロ(約10億円)。あとはおしなべて慎ましく、アルメリア、レバンテ、ラージョ、エスパニョールは1ユーロも使っていない。エルチェとバジャドリーは100万ユーロ以下、マラガとオサスナ、レアル・ソシエダは300万ユーロ以下だから、これらもかなり倹約している。
この状況、傍観者にとってはあまり面白くないはずだ。移籍市場で動くお金は夏の花火。紙面やニュースサイトに広がる額は、どーんと大きいほどワクワクする。
しかし一歩引いてシーズン全体を眺めると、おかげでリーガに変化が生じていることに気付く。緊縮財政が補強に頭を使うことを強いたせいだ。