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コンフェデで出場時間0分の屈辱。
酒井高徳があと1年でできること。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/07/11 10:31
ドイツカップ決勝、トーマス・ミュラーと競り合う酒井。67分からの途中出場ながら1アシスト。コンフェデ杯から帰国後、来シーズンについて「1試合でも多く出て、ゴールやアシストを決めて目に見える結果を残すことが代表へのアピールになると思っている」と語った。
背番号3というのは、左サイドバックを象徴するような番号だ。ロベルト・カルロスも3番だったし、日本代表の左サイドバックとして初めてW杯に出場した相馬直樹氏もそうだった。
だが、6月のブラジルで、日本代表の背番号3がピッチに立つことは、なかった。
コンフェデレーションズカップの最終戦、メキシコ戦の後半31分、長友佑都が負傷したことで、酒井高徳はベンチを飛び出してウォーミングアップに入った。
しかしザッケローニ監督は、長友の負傷前から交代の準備をしていた中村憲剛を投入。わずか12分前に4-2-3-1から3-4-2-1へとフォーメーションを変更したばかりだったにもかかわらず、再び4-2-3-1へと戻す決断をしたのだ。
試合後の記者会見で12分間だけに終わったフォーメーションについて、ザッケローニ監督は「3-4-3というより3-4-2-1」と解説した。また、現チームで3バックを採用する理由の一つは、長友の攻撃力を活かしたいという思いがあるから、だという。
確かに、transfermarkt.deという選手の市場価値を推定するサイトを見ていても、長友のそれは日本人サイドバックの中では群を抜いて高く、1200万ユーロとなっている。彼がそれだけの価値のある選手であることに議論の余地はないだろう。
しかしながら、メキシコ戦での交代は非常に危ういモノだった。
長友以外に3-4-3の左MFを務められる選手はいないのか。
ゴールを奪うためにフォーメーションを変えて間もないのに、長友がいなくなった瞬間にフォーメーションをもとに戻したのでは、長友以外に3-4-3の左MFを務められる選手はいないと宣言しているようなものだ。
ともすればチームのために選手がいるのではなく、特定の選手のためにチームがあるというメッセージにもとられかねない。長友とて、そんなことを望んではいないだろう。
そして、逆に厳しい現実を突きつけられたのが酒井だった。
しかし、メキシコ戦のあの場面、相手にリードを奪われ、左サイドでプレーする長友が負傷したタイミングだったからこそ、酒井が起用されていたら違う展開になっていたかもしれない。
今シーズンのリーグ戦ではアシストなしに終わった酒井だが、リーグ終了後に行なわれたドイツカップ決勝戦、欧州チャンピオンになったばかりのバイエルンとの試合で左サイドバックとして途中出場すると、左足でファーサイドへ送ったクロスで、右MFハルニクのヘディングによるゴールをアシストしてみせるなど、自身のサイドから攻撃を活性化させていた。
「シーズンを通してアシストがなかったのに、なんでここに来てアシストが……。でも、一つ自信にはなった」
試合後、酒井はこうコメントした。実は酒井は、今シーズンのリーグ戦では27試合中で24試合に左サイドバックではなく右サイドバックとして出場している。ドイツカップは久々の左でのプレーだった。