MLB東奔西走BACK NUMBER
イチローが偉業までの秒読み開始!
苦難の10年間に意外なデータを発見。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKYODO
posted2010/09/17 11:00
9月14日のレッドソックス戦では、松坂大輔からタイムリー2塁打を打ったイチロー
いよいよイチロー選手が、前人未到の10年連続200安打達成を射程圏内に捕らえた。
7月の月間打率が.246に留まり、一時は「現時点でシーズン○○○本ペースとなり、記録達成に暗雲」というような報道が一斉に流されたこともあったが、蓋を開けてみればイチローはこれまで通り安打を積み重ね、メジャーに新たな歴史を刻む寸前まで到達してきた。
そこで、あらためてイチローの月間打率について掘り下げてみたい。過去10年間に及ぶシーズン別の月間打率を表にまとめてみた。
シーズン | 安打数 | 3~4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9~10月 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2001年 | 242本 | .336 | .379 | .330 | .268 | .429 | .349 | ||
2002年 | 208本 | .316 | .404 | .353 | .321 | .282 | .248 | ||
2003年 | 212本 | .243 | .389 | .386 | .342 | .242 | .273 | ||
2004年 | 262本 | .255 | .400 | .274 | .432 | .463 | .379 | ||
2005年 | 206本 | .356 | .288 | .243 | .364 | .244 | .331 | ||
2006年 | 224本 | .287 | .371 | .386 | .317 | .233 | .333 | ||
2007年 | 238本 | .305 | .357 | .427 | .289 | .369 | .347 | ||
2008年 | 213本 | .252 | .319 | .312 | .333 | .350 | .298 | ||
2009年 | 225本 | .306 | .377 | .407 | .336 | .340 | .325 | ||
2010年 | 189本 | .344 | .336 | .321 | .246 | .307 | .345 |
こうやって数字を並べてみると分かるのだが、シーズン前に発症した胃潰瘍で出遅れて試合数が減った2009年シーズン以外、イチローは月間打率2割台を毎年記録しているのである。シーズン最多安打のメジャー記録を塗り替えた2004年でさえ、3~4月と6月の2回も2割台を記録しているのだ。そう考えると、今シーズンの2割台は前述の7月のみなのだから、むしろ例年より好不調の波が小さかったと言えるのではないだろうか。
イチローといえども打撃の好不調の波はある。
さらにこのデータからは、いかに“安打製造器”の異名を誇るイチローといえども、他の選手同様、打撃の調子に波が生じてしまうことからは逃れられないということが分かる。改めて表にしてみると、2割台の月が意外に多いことに驚きさえ感じるはずである。
とは言え、イチローがメジャー球界で突出した存在になっている理由が、打撃の“安定”であることには間違い無い。以前にこのコラムで、イチローの驚異的成績を解くカギとして故障なく試合出場を続ける身体的な“強靱さ”を説いたことがある。そこに、さらにもう1つ理由を付け加えるならば、それは打撃の“安定”であると断言したい。