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ネイマールが乗り越えるべき
バルサのブラジル人助っ人の轍。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2013/06/11 10:30

ネイマールが乗り越えるべきバルサのブラジル人助っ人の轍。<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

6月3日、バルサ入団セレモニーでのネイマール。5万人以上の観客が新たなブラジル人スターの入団を歓迎した。

必ずトラブルになりチームを去る、ブラジル人選手達。

 一方、こうした数々のハイライトをバルサの近代史に刻んできたブラジル人クラック達には、揃って後味の悪い去り方でクラブを後にしたという共通点がある。

 気まぐれな天才ロマーリオが輝いたのは加入初年度のみ。ワールドカップアメリカ大会を経た2年目はあからさまにやる気をなくし、あっさりブラジルへ帰国してしまった。

 ロナウドは加入1年目から49試合47ゴールという驚異的な数字を残した後、大幅な年俸アップを要求したことでクラブとの契約交渉が決裂。結果として僅か1年でインテルへ移籍することになった。

 ロナウジーニョも高いモチベーションを維持できたのは3シーズン目まで。パフォーマンスがガタ落ちした最後の2年間は夜遊び癖や重量オーバーを叩かれ続け、最後はジョゼップ・グアルディオラ監督から戦力外とされクラブを去っている。

 5シーズン在籍したリバウドは他の選手と比べパフォーマンスは長続きした方だったが、我が強すぎる性格から左ウイングでのプレーを強いるルイス・ファンハール監督との衝突を繰り返した。結局最後は同監督の復帰に際し、どうしてもそりが合わないという理由で、契約解除という“裏口”からミランへと移籍している。

ロマーリオ、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョという4つの「R」。

 その蜜月関係は長続きしなかったものの、在籍中に見せた儚くも眩い輝きで人々に強烈なインパクトを残してきたブラジル人クラック達。その系譜を継ぐからこそ、人々はネイマールの加入に不安と期待の入り混じった心境を抱いてしまうのだろう。

 冒頭に並べた通り、現時点では未知数な部分が多い。

 加入1年目から驚異的なパフォーマンスを発揮した4人の「R」とは違い、バルサ加入時点でヨーロッパでのプレー経験が全くないネイマールはピッチ内外の適応に時間がかかるかもしれない。

 自身が“王様”としてプレーできないことも、過去の例とは大きく異なる点だ。現在のバルサの中心はメッシであり、ネイマールもメッシのためにプレーすることが求められる。また特別扱いを受けていた先輩方とは違い、前線からのプレスがチーム戦術の鍵となっている現在のバルサでは、他のチームメートと同様に守備のタスクもこなさなければならない。そのことも攻撃面で持てる才能を発揮する妨げとなる可能性があるだろう。

 それでもネイマールの加入は、今のバルサに良い意味での化学反応をもたらすことを我々に期待させる。例えばそれは、選手達が忘れつつある「遊び心」を思い出させることだ。

【次ページ】 常勝軍団のバルサに今こそ必要な“遊び心”。

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