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【コンフェデ2013 出場国解説】
ブラジルは苦境から抜け出せるのか!?
若きエース、ネイマールにかかる期待。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2013/06/09 08:00
来季からバルセロナでプレーすることが決まっているネイマール。母国ブラジルにコンフェデ優勝という置き土産を残すことができるか。
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来季からバルセロナでプレーすることが決まっているネイマールは、
母国ブラジルにコンフェデ優勝という置き土産を残すことができるか。
2014年W杯を開催国として迎えるサッカー王国・ブラジル代表は、W杯予選を免除されていたため、今回のコンフェデ杯が貴重な公式戦の機会となる。しかしこの1年、カナリア軍団は混乱期にあった。
地域 | '14年W杯開催国 |
出場回数 | 7大会連続7回目 |
監督 | ルイス・フェリペ・スコラーリ |
FIFAランキング | 19位(5月9日現在) |
そのきっかけは、マノ・メネーゼス監督の解任だった。ブラジル国内リーグで着実に実績を残した指揮官は、'10年W杯後に就任してからネイマール、オスカルらの若手を抜擢。メネーゼスはU-23代表監督を兼任するなどチームの若返りを推し進めた。
しかし、U-23代表監督の兼任が結果として彼のキャリアにとって裏目に出る。
初の金メダル獲得を厳命されたロンドン五輪では、ネイマールやオスカル、パトらU-23の選手に加え、チアゴ・シウバ、マルセロ、フッキの3人をオーバーエイジで起用し総力体制で臨んだ。しかし決勝戦で伏兵メキシコに足元をすくわれると、結果に厳しい国民から批判の声が上がった。そして11月、協会はメネーゼス監督の解任を決め、'02年W杯でブラジル代表を優勝に導いたルイス・フェリペ・スコラーリにその任を託した。
ただ、チーム状況は決して好転したわけではない。新体制初戦となったイングランド戦ではロナウジーニョらのベテランを招集したが1-2で敗戦。続いてのイタリア、ロシア戦も内容面で苦しんで引き分けに終わった。改修工事が終わったマラカナンで6月2日に行なわれたイングランドとの再戦も2-2と勝ちきれない戦いが続いている。
ネイマールへの期待は高まるが、不安を残す中盤の構成。
この苦境を脱するために、エースのネイマールにかかる期待は大きい。16歳でブラジルの名門・サントスFCとプロ契約を交わし、'11年にはコパ・リベルタドーレスで48年ぶりとなる南米制覇をクラブにもたらす原動力となった。
'10年8月にデビューしたブラジル代表でも、既に33試合20ゴール(6月2日現在)とエースとしての地位を確立。昨年9月には格下の中国相手とはいえ代表キャリア初となるハットトリックを達成した。来シーズンからは「僕が小さい頃から、そして大人になってからも夢だった」というバルセロナへの入団が決定し、注目はさらに高まっている。
ネイマールの他にも、フレッジ(フルミネンセ)が今年に入って得点を量産しているのは心強い。またダニエウ・アウベス(バルセロナ)とマルセロ(レアル・マドリー)の両サイドバックは、所属クラブと同様に積極果敢なオーバーラップで攻撃に厚みをもたらしている。
問題があるとすれば、前線を活かすための中盤の構成だろうか。昨年10月の日本戦で強烈なミドルシュートを決めたパウリーニョ(コリンチャンス)らがその位置を務めるが、彼らはまだ過去のセレソンを支えたドゥンガ、マウロ・シウバ、エメルソンのような絶対的な存在には至っていない。
ホームの大声援を受けるコンフェデ杯で、国民は大会3連覇を切望している。優勝請負人フェリペ率いるセレソンにとって負けが許されない戦いが幕を開ける。