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高卒プロ1年目投手を酷使し過ぎ!?
藤浪を見て考えた大器の育て方。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2013/06/03 12:20
6月2日のソフトバンク戦は藤浪に勝ち星こそつかなかったが、最終的に逆転勝利し、首位に躍り出た阪神。試合後、藤浪は「次は勝てるピッチングをしたいです」と語った。
日・米の報道姿勢の違いを感じずにはいられなかった。
5月16日のタイガース戦で、ダルビッシュ有(レンジャーズ)が勝ち星を挙げた時のことだ。
この日、ダルビッシュは8回を投げて7安打4失点、チームを勝利に導く見事なピッチングを見せたはずだった。しかし、海の向こう――アメリカのメディアは、この日のダルビッシュの快投を好意的には捉えていないようだった。この試合のダルビッシュが130球を投じていたことを問題視し、レンジャーズのワシントン監督に対して非難の声があがったのだった。
MLBは、とにかく、球数制限に敏感だ。
投球数が多くなった若手投手が翌年に故障や不調をきたす可能性があるという考え方がシェアされているようだ。
それはそれとして理解できるのだが、球団側が球数を配慮して好投の投手を降板させるならともかく、メディアが1試合限りの球数が理由だけで指揮官を叩くとは、およそ日本では考えられないことではないだろうか。
高校時代の活躍からすると、まだ物足りない藤浪のピッチング。
阪神の高卒ルーキー・藤浪晋太郎が6月2日のソフトバンク戦で6回途中8安打を浴び2失点で降板した。その後、チームが逆転し、藤浪に黒星は付かなかったが、今季初めてイニング途中でマウンドを降りるという屈辱に、その表情からは悔しさが伝わって来た。
故障明け2戦目であることや1年目のシーズンの疲れがでてきているなどの声もあるが、個人的な意見としては、今シーズン一番の出来に近かったのではないかと思っている。
この試合までの藤浪の成績は素晴らしい。
7試合に投げて4勝1敗。防御率は1.98。
中継ぎとして登板した4月7日の広島戦を除いて、先発したすべての試合でQS(クオリティスタート)を果たしている。ランナーを背負ってからの粘りのピッチングは、さすがは甲子園春・夏連覇に輝いたチームのエースと思わせるものだった。
しかし、その投げているボールはというと、高校時代の藤浪と比べて物足りなさが残るのもまた事実。藤浪が勝利インタビューのたびに、「野手のおかげ」と口にするのは社交辞令ではないのである。