野ボール横丁BACK NUMBER
広島・堂林翔太よ、もっと三振を!
先人に学ぶ、ふてぶてしさの極意。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/06/05 12:50
堂林は「自分の打撃ができていないので……。甘い球を見逃してるし、直球を狙ってもファウルになる。今の状態で試合に出ても結果がいい方向に出ない」とコメント。
未来の「ミスター赤ヘル」候補、堂林翔太があえいでいる。
5月26日、昨季の開幕戦からどんなに不調でも使われ続けてきた堂林の連続試合出場がついに190でとまった。
6月4日現在で、打率.220、ホームラン2本。球団屈指の人気選手で、これだけ華のある選手もそうはいない。しかし首脳陣としてもこの数字では使いたくても使いにくい。しかも三塁手としてエラーも多く(昨季は両リーグ最多となる29失策)、守備の人でもない。堂林に期待されているのはあくまで打つことであり、もっと言えば長打だ。
監督の野村謙二郎は「調子のいい人を使っていく。あまりにも打撃がノー感じな人(打てそうにない人)は代えてみようかということ」と語ったという。
堂林翔太のひとつの特徴は三振が多いということだ。
昨年は両リーグ最多となる150三振をマーク。これは球団最多記録でもあったため球団は「150三振写真展」を開催した。本人も訪れ、「振ってきた結果だけど、あらためて三振が多いなと思った」と複雑な表情を浮かべていたそうだ。
三振自体は悪いものではない。強打者はえてして三振が多いものだ。ただし、三振を怖れ、中途半端なスイングで三振してしまっては何の意味もない。
ブランコと三振数は同じだが、四球が半分以下の堂林。
堂林の現在の三振数は47個(6月4日現在)でリーグワーストタイである。気になるのはむしろ追い込まれたときなどに当てに行くようなスイングが目立つことだ。
本塁打レースを独走中のDeNAのブランコも堂林と同じく47個(同)の三振を喫している。しかし四球も32個(同)と多い。つまり、それだけ怖れられているということだ。一方、堂林の四球は13個(同)にとどまっている。これでは単に与し易い打者である。
三振が多い右のスラッガーというと最近では西武の中村剛也が思い出される。
46本をマークし初めてホームラン王を取った2008年は、162三振をマーク。これは歴代7位、かつ右打者としては過去最高の記録でもあった。
中村は'09年、’11年、’12年と本塁打王に輝いているが、最初の2回には「三振王」がセットでついてきた。
それでも中村は「毎打席、(ホームランを)ねらってますよ」と迷いがない。
「常にホームランになるスイングを心がけてる。ヒットを打とうとはほとんど考えてないですね。ヒットねらいになると当てにいってしまうような感じになるのが嫌なんですよ。中途半端になる」