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高卒プロ1年目投手を酷使し過ぎ!?
藤浪を見て考えた大器の育て方。  

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2013/06/03 12:20

高卒プロ1年目投手を酷使し過ぎ!?藤浪を見て考えた大器の育て方。 <Number Web> photograph by Nanae Suzuki

6月2日のソフトバンク戦は藤浪に勝ち星こそつかなかったが、最終的に逆転勝利し、首位に躍り出た阪神。試合後、藤浪は「次は勝てるピッチングをしたいです」と語った。

藤浪が見せた、試合中の絶妙な修正力。

 成長がうかがえたのは、2回裏のピッチング。

 4番・松田宣浩、5番・長谷川勇也の連打で無死一、二塁のピンチをまねいて、左打者の6番・ラヘア、7番・柳田悠岐を迎えた時だった。

 ラヘアへの初球、インコースのカットボールでストライクを取ると、2球目のストレートでファールを奪って簡単に追い込んだ。3球目のスライダーは抜け、4球目のアウトコースのストレートは微妙な判定でボール。外のスライダーをカットされた後の、6球目にインコース膝元のストレートで空振り三振。

 柳田へはスライダーで簡単に追い込むと、すべてスライダーで続けて空振り三振。

 続く右打者の今宮に対しては、ストレート主体で押しながら、最後は外のスライダーで空を切らせた。

 三者連続三振でこの窮地を切りぬけたのだった。

 4回裏にも左打者二人を完ぺきに抑えている。

大器にもかかわらず……高卒ルーキーイヤーの酷使がたたった例も。

 藤浪は5、6回に1点ずつを失っている。

 好調・ソフトバンク打線の前に、今の藤浪ではこれが限界だった。だが、それほど悲観するような内容ではなかったというのが、この試合での印象だった。

 毎試合、投げるたびに修正してくる藤浪には驚かされるばかりだが、とはいえ高卒の新人投手が、どのくらい1年目から投げて良いものか不安が出てくるのも確かだ。

 例えば、昨年、高卒新人として見事な1年を過ごした楽天の釜田佳直やソフトバンクの武田翔太の今季の苦しみを見ると、高卒ルーキーイヤーの活躍こそ認めるものの、その後の成長ぶりという点で必ずしも前に進んでいないと感じてしまうのである。 

 高卒の新人投手が1年目から一軍デビューするケースが増えたのは、おそらく松坂大輔(インディアンス)の活躍からだろう。

 その後、ダルビッシュをはじめ、涌井秀章(西武)、田中将大(楽天)、吉川光夫(日ハム)、増渕竜義、由規(ともにヤクルト)、大嶺祐太、唐川侑己(ともにロッテ)などが続いてきた。

 名前だけを見れば実績を残した良い選手ばかりなのだが、後に、故障で苦しんだケースも多いことが分かる。

 例えば、昨年の活躍でパ・リーグを代表する投手に成長しつつある吉川。彼は1年目の2007年、19試合に登板。シーズン途中からローテーションを務めあげ、日本シリーズにも登板した。しかし、2年目で7試合2勝にとどまると、そこから3年間は一軍で未勝利と不調に陥った。

 高校最速右腕として華々しくデビューした由規はもう少し難しい。1年目の2008年、6試合に投げて5試合で先発2勝を挙げると、2年目、3年目はローテーション投手としてチームを支えた。しかし、4年目にわき腹と右肩を相次いで故障、昨季は左すねを剥離骨折して登板0に終わると、今年4月に右肩のクリーニング手術を受けた。今季中の復帰は絶望とされている。

【次ページ】 無理せず、じっくり育てられた前田健太のケース。

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