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高卒プロ1年目投手を酷使し過ぎ!?
藤浪を見て考えた大器の育て方。  

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNanae Suzuki

posted2013/06/03 12:20

高卒プロ1年目投手を酷使し過ぎ!?藤浪を見て考えた大器の育て方。 <Number Web> photograph by Nanae Suzuki

6月2日のソフトバンク戦は藤浪に勝ち星こそつかなかったが、最終的に逆転勝利し、首位に躍り出た阪神。試合後、藤浪は「次は勝てるピッチングをしたいです」と語った。

無理せず、じっくり育てられた前田健太のケース。

 一方、広島の前田健太など2年目からデビューした選手は、ある程度プロ入り後に身体を作る期間が与えられる分、若いうちの怪我が少ないように思われる。

 前田はプロ1年目から一軍で投げる力があると高く評価されていたが、当時のチームの方針から無理をせず二軍で力を蓄えたのが功を奏したケースだ。

 1年目の2007年が0試合、2年目に19試合、3年目に29試合登板と徐々に登板数を増やした前田は6年間でシーズン中に離脱したことがほとんどない(今季のWBCの影響は気になるところだが)。これは同期の楽天・田中とは異なる順調な成長ぶりで、実は年間200イニング登板に到達したのは、デビューでは田中の後になる、前田の方が先なのだ。田中は意外と故障による離脱が多い、ということである。

 前田健のほかにも、ロッテのエース成瀬善久も一軍デビューは3年目からだし、広島の大竹寛もデビューは2年目。オリックスの井川慶もデビューは2年目で、一軍定着は4年目からだった。

高卒1年目で活躍し、30歳で大きな故障を抱えた松坂を見ると……。

 高卒新人投手でいうと、6月1日には二刀流に挑戦中の日ハム・大谷翔平がプロ初勝利を挙げた。

 大谷が試合後にコメントしたのは藤浪と同じ内容、「野手の方のおかげ」という言葉だった。これは先輩や野手への気づかいではなく、彼らは純粋に自分の力の物足りなさを痛感しているからなのである。

 高卒ルーキーが華々しくデビューする姿は、見る側としては楽しみではあるし、メディア受けも良いだろう。しかし、MLBを巡るメディアの姿勢を知ってしまうと……少し考えを改めねばならないのかも、と思った。

 甲子園で春夏連覇を達成し、高卒1年目から華々しくデビューしながら30歳という一番脂が乗るころに大きな怪我を患った松坂。これほど凄い能力の投手でさえ、故障で苦しんでいる姿を見ると、高卒の新人投手が1年目から一軍登板することに、多少なりとも議論があっても良いのかもしれない。

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