サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ザックジャパンが変わる第一歩?
工藤壮人、東慶悟にかかる使命。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO SPORT
posted2013/05/27 12:00
2011年の代表候補合宿候補にも呼ばれていたが、その時は落選した東(右)。「自分がA代表の実力に達しているとは思いません。でも、自信を持って挑戦したい」とコメントしている。
徐々に固定化しつつあったザックジャパンのメンバー。
ザッケローニ監督のメンバー編成は各ポジション、レギュラーとサブの2人制を敷いている。
例えば遠藤保仁には細貝萌、長谷部誠には高橋秀人という具合で、1つのポジション2人でワンセットだ。これは、レギュラーとサブに明確なラインが引かれる一方、この2人のポジション争いを熾烈にさせる要素も含んでいる。
実際、昨年は内田篤人と酒井宏樹が右サイドバックでポジション争いを展開し、一気にレベルを上げた。今なおサイドアタッカーは熾烈な競争が続いているくらいだ。とはいえ、最近はさらに新しいメンバーが入る隙間がなくなってきており、2人制そのものの顔触れが不変になり始めていたのも事実だろう。
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今回、フレッシュな選手が入ることで、競争意識が高まるのは間違いない。それがチーム全体に緊張感を生み、雰囲気も引き締まるはずだ。
競争意識が高まりお互いが切磋琢磨してレベルアップすれば、チームもより成長することができる。
とりわけ、センターFWの前田遼一、ハーフナー・マイクには非常にいい刺激になるだろう。
前田は今季、わずか2得点と調子を落としている。ハーフナーはフィテッセでサイドやトップ下で起用されて11得点と結果を出したが、代表ではセンターFWとして及第点を得ているわけではない。監督は2人に物足りなさを感じているはずだし、彼らも危機感を抱いているだろう。工藤が少ないチャンスで結果を出せば、センターFWの序列が崩れる可能性は十分にある。
工藤と東の選出は、Jリーグの他の若手選手に対するメッセージだ。
工藤と東の2人は、ザッケローニ監督が早くから興味を持っていた選手とされている。他にも、監督の頭の中にはまだ相当数の若い選手の名前がインプットされており、彼らの成長具合を見極めて代表に招集するつもりなのだろう。工藤と東は、他の若い選手が代表入りするためのひとつの目安となったのである。
これまでは「代表はもうメンバーが決まっているから」と半ば諦め気味だったが、2人の招集は、Jリーグでプレーする若い選手のモチベーションを大いに高めることにもつながったのである。
今回メンバーから漏れた柿谷曜一朗、山口螢、扇原貴宏、大迫勇也、柴崎岳らにも、これからの結果と成長次第では招集される可能性がある――そういう明確なメッセージをザッケローニ監督が投じたという点だけでも、非常に意味があると言えるのではないか。