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熱心なファンは新しいファンを育てる!?
顧客同士が満足度を高めあう好循環。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byMLB Photos via Getty Images
posted2013/05/27 10:30
ドジャースタジアムで、イニングの合間に「TAKE ME OUT TO THE BALLGAME」を歌って盛り上がるファン。応援席の一体感はテレビ観戦では味わえない醍醐味だ。
日本野球機構が、2013年度公式戦(第1クール終了時まで)の入場者数を発表した。それによると、1試合平均の入場者数はセ・リーグで26,801人(前年同時期比 1.5%増)、パ・リーグは20,783人(同 0.1%減)と、まずまずのスタートを切っているようだ。
爽やかな気候のこの季節。スタジアムでの観戦を楽しんだ読者も多いのではないだろうか。
前回は、日本のプロ野球を題材に、顧客満足度を高める前提として必要な条件を確認した。では、具体的に、どのような施策を設計していけばいいだろうか。
ここで一旦、アメリカの状況に目を向けてみよう。
MLBでは「観客は試合の結果に一喜一憂するだけではなく、スタジアムでの体験に基づく印象でも満足度が変わる」という考え方もあり、球団はスタジアム内で実施する様々なエンターテイメントに工夫を凝らしている。
例えば7回表が終了した時に歌う「TAKE ME OUT TO THE BALL GAME」や、ニューヨークヤンキースタジアムで流れる「YMCA」など、試合の合間に観客が楽しめる時間が用意されている。
食べ物も重要だ。定番は、ビールとホットドッグだろう。ドジャースタジアムで売られているドジャードッグなどのように、スタジアムごとにチームや地域の特長を活かした名物が作られている。
その他にも選手やスタッフとの交流、映像エンターテイメントなど観戦体験を充実させてくれるものが多々企画されており、スタジアム観戦を盛り上げてくれる。
顧客同士が影響し合い、満足度を高める環境とは?
観客の満足度につながる体験はどのように創られるのか。施設などの物理的環境によるもの、また試合の内容自体によるものの他に、選手、球団スタッフ、球場スタッフなど、その場を共有する人同士のインターラクションによって創られるところが大きい。
今回はこの「場を共有する人同士のインターラクション」の中でも、提供者である従業員(球団スタッフ)とサービス受益者の顧客(観客)の関係性ではなく、顧客同士のインターラクションにフォーカスをし、そのビジネスインパクトについて考えていきたい。
このような体験はないだろうか。スタジアムに行って、左右前後にいた全く見ず知らずの人と一緒に応援しているうちに、意気投合したり、勝利の喜びを分かち合ったりして、気分が最高潮に達する瞬間。試合は負けたけど、それでも満足して家路につくこと。この興奮感こそTV観戦するときとの大きな違いであり、スタジアム観戦の醍醐味の1つである。
そしてこのような体験をしているかどうかはきっと、スタジアムに足を再度運ぶかどうかに大きく影響する。
となれば、観客同士がお互いに満足度を高めるような環境を、どのように創りだしていくのかという点が課題となってくる。