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「稼ぎ」と「リスク」で考える、
大谷翔平・二刀流の“損得勘定”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/05/25 08:01
5月23日、投手デビュー戦となったヤクルト戦の3回、バレンティンから三振を奪い雄叫びをあげる大谷。5回6安打2失点で勝ち負けはつかなかったが、最速157kmの速球を披露するなど、投手としてのポテンシャルを存分に見せつけた。
二刀流に挑戦する日本ハムの大谷翔平選手が、いよいよ投手として一軍デビューを果たした。
5月23日のヤクルト戦で先発マウンドに立った大谷は、5回86球を投げて6安打2失点。1点リードを許した場面でマウンドを降りたが、8回に中田翔外野手の同点弾が飛び出して勝ち負けはつかなかった。
それでもこの試合までに14本塁打を放っているヤクルトの4番、ウラデミール・バレンティン外野手からは2三振。3回に2つ目の三振を奪ったときには、西武でデビューしたときの松坂大輔投手(現クリーブランド・インディアンス)を上回る157㎞をマークしてファウルをとると、最後は155㎞のストレートで空振り三振に仕留めている。86球中65球がストレートで、スライダーが19球、カーブが2球と、真っすぐを軸に力でグイグイ押した投球は、ウワサに違わぬポテンシャルを感じさせるものだった。
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一方、一足先に開幕から一軍デビューを果たしている打者としても、この試合まで15試合で39打数12安打の打率3割8厘をマーク。高卒ルーキーながら3割を打っていることもそうだが、特筆すべきは12本の安打のうち5本が二塁打ということだ。この数字はフロックも含めて安打を重ねているのではなく、しっかりとバットの芯でボールを捕らえている――その打撃センスの非凡さを表すデータということになる。
ふたつの才能は認められたが、ならばこそ早く二刀流は捨てるべき!?
この投手デビュー戦で大谷は、改めて投手と野手の両方で高いポテンシャルを証明し、これから本格的に二刀流に挑むことになるわけだが、ただ、そこであえて思うことがある。
それはこれから10年先、20年先を見据えたとき、二刀流といえども、実は今から一刻も早く投手なのか野手なのか、どちらかを軸に据えて野球に取り組むべきだということだ。
二刀流の先輩でもある関根潤三さんも、現実的には投手を軸に野手もこなしていた生活は7年間だった。そして8年目には野手一本に転向している。それほど二刀流とは負担も大きく、結果的にはどっちつかずの選手になってしまう危険性をはらんでいる。