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熱心なファンは新しいファンを育てる!?
顧客同士が満足度を高めあう好循環。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byMLB Photos via Getty Images
posted2013/05/27 10:30
ドジャースタジアムで、イニングの合間に「TAKE ME OUT TO THE BALLGAME」を歌って盛り上がるファン。応援席の一体感はテレビ観戦では味わえない醍醐味だ。
提供するサービスと顧客の期待値は合致しているか。
ここで、前回のポイントをおさらいしてみよう。
◆顧客満足を上げるためには、まず従業員自身が「自社のターゲット顧客」と「自社のサービスコンセプト」を理解している必要がある
◆ターゲット顧客像とサービスコンセプトが明確になると、従業員もやるべきことが明確に見えてくるため、サービスクオリティの向上につながりやすい
さらに言えば、この2点を明確化することで顧客にも「どのようなサービスが受けられるのか」が伝わるため、顧客が企業側の想定を超えるような期待値を持ってしまうことを防ぐことができる。そしてこのことが、顧客満足度を上げる「サービスのクオリティ」に大きなインパクトを与える。
例えば、一丸となってチームを応援したい気持ちでスタジアムに来ている人たちに囲まれて観戦する場合と、ただ試合を観たいだけで来ている人が多い中で観戦する場合では、たとえ同じ試合内容、同じスタジアム、同じスタッフに囲まれていても、全く違う体験になる。どちらの状況が心地よいかは、観客がスタジアム観戦に何を求めているかによって違いはあるが、1つ共通して言えることは、自分自身と同じ期待値を持っている人との集団の中でスタジアム観戦をしたほうが、満足度が高い体験になるということである。
つまり、その場で起きる顧客同士のインターラクションが満足度を高めるものになるポイントは、期待値の似通った顧客が集う場(状況)をいかに創造することができるかにあるということだ。
企業が提供するサービスの内容や質も顧客満足度向上に影響する重要な要素だが、どのような顧客を集めるのかということに関しても戦略的に考えなければ、サービスの質のコントロールが難しくなる。
ロイヤルカスタマーが持つ他の顧客への影響力。
しかし、顧客の集め方だけで話が終わるわけではない。ここからが重要である。顧客同士のインターラクションにおいて、すべての顧客が同じような影響を与えているのではない。当然のことながらロイヤルカスタマーになればなるほど積極的に他の顧客とインターラクションをとる。
例えば、ロイヤリティの高いファンは、初めて来場したようなエントリー顧客に間接的に応援の方法を伝え、巻き込み、初めて来場した観客にスタジアム観戦の楽しさを伝えていく。そしてそれに巻き込まれたエントリー観客は満足度を高め、その人自身もロイヤルカスタマーへの道を上り、やがて次のエントリー顧客に観戦の面白さを伝えていく……これがどんどん繰り返されていき、顧客同士のインターラクションが活発になる。