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悪条件を越えて“日本らしく”勝て!
ヨルダン戦で見えてくる本当の実力。 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2013/03/25 13:40

悪条件を越えて“日本らしく”勝て!ヨルダン戦で見えてくる本当の実力。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

2012年6月、埼玉スタジアムで行われたヨルダン戦では、6-0と日本が圧勝。だが今回、ヨルダンのホームで臨む一戦ではヨルダンのメンバーも大きく変わり、全く予想がつかない。

必要のない“上から目線”で臨んでしまったカナダ戦。

 攻撃の局面で個の能力の差を見せつけて先制点を奪ったものの、逆にこれが悪い意味での安堵感につながり、心の隙を埋められないまま主導権を握られ続けた。

 相手が事前の予想以上の難敵であった場合、そのことを認識し、やるべきことを再認識するハーフタイムの“間”と、選手交代があって初めてチームは事態の収束に取り掛かることができる。仮に試合が90分一本で行なわれたなら、60分でも70分でもカナダペースの展開がズルズルと続いた可能性が高い。

 つまりあの日の日本は、4日後の本番を見据えて、格下カナダとの親善試合にまるで必要のない“上から目線”で臨んでしまったのである。

 もしこれを厳密な意味での“調整試合”とするなら、前半の45分間で試合を決め、後半の45分間を来る本番に向けたオプションを模索する時間にしようとする明確な意図と気迫が欲しかった。しかしカナダ戦のピッチにフラッと立ってしまった日本からは、意図も気迫も感じられなかった。

 それでも格下との調整試合であるから、日本には最後まで勝利を目指して戦わなければならないプライドがある。中村憲剛や栗原勇蔵、決勝ゴールを奪ったハーフナー・マイクの活躍というポジティブな側面は確かにその結果として生まれた。

 しかし、まともに90分を戦ったチーム全体としては「無用な体力の消耗」という意味で決してポジティブではない。前述のとおり、ピッチ上で散見された課題はあまりにも初歩的であり、今や日本は、これを「修正したい」と肯定的に捉えて楽観視するような低いレベルにはないはずである。

ヨルダンは、日本を仮想したベラルーシを相手に順調な調整。

 日本がカナダに思わぬ苦戦を強いられていたその頃、ヨルダンはホームでベラルーシと対戦し、日本を仮想した相手を狙いどおりの1-0で仕留めた。

 得点シーンは前半31分。右サイドのセンターライン付近から相手最終ラインの背後に球足の長いスルーパスを通し、これをスピード抜群のFWオダイが折り返すと、キャプテンのMFアメル・ディーブが見事なループシュートでGKの頭上を越した。ベラルーシの中盤で選手の足が止まり、プレスが機能不全に陥った一瞬の隙を突いたスルーパスからのゴールだった。

 グループ最下位のヨルダンがわずかな希望を繋ぐためには、絶対的な自信を持つホームで何としても勝たなければならない。しかし相手は、昨年の対戦後に指揮官が「ブラジルにも勝てる」と白旗を上げた格上の日本。ならば自分たちがやるべきことは明確である。

 失敗を恐れずに勇敢に、ハイプレッシャーを掛けて相手の動揺を誘う。先制点を奪って勢いを加速させる。あとはベラルーシ戦と同じように、チーム一丸となって失点をゼロに抑えればいい。日本戦に向けたヨルダンのプランは、ベラルーシ戦の成功体験によってより強固になった。

【次ページ】 ヨルダンに敗れた豪州の将の言葉に学ぶべきこと。

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