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“影武者”中村憲剛が香川を活かす!
カナダ戦で得た「Wトップ下」の収穫。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/03/23 12:45
後半開始からピッチに入ると、香川と何度もコミュニケーションをとる姿が目立った中村。プレー面でも両者の連係の良さは際立っていた。
「ヨルダン戦の前に、このカナダ戦があって良かったと思います」
先制ゴールを挙げた岡崎慎司は試合後、そう、しみじみと言った。
勝てば5大会連続となるW杯出場が決まるアウェー、ヨルダン戦に向けた“調整試合”として組み込まれた22日のカナダ戦。結果は2-1と勝つには勝ったのだが、大一番に向けて反省材料の多い試合内容となった。
多少の苦戦は予想できていた。というのも、前日練習はこの試合に合わせた軽めの内容ではなかった。あくまでヨルダン戦にトップコンディションを持っていこうとしており、まだまだ調整中の段階だということ。それにまた対戦相手であるカナダの分析も念入りにやっていたわけでもない。いくらか苦しむだろうが、それでも一軍半のメンバーでやってきたFIFAランキング68位のカナダ相手に、最後は力の差を見せつけて終わるというパターンだと踏んでいた。
だが蓋を開けてみれば、予想以上に手を焼いた。カナダがモチベーション高く試合に臨んだことも理由にあるだろうが、ザックジャパンの面々が“調整”という意識を強く持ちすぎてしまったような印象も受けた。
立ち上がりからカナダにペースを握られ、我慢の時間が続いた日本。
まずは試合展開を簡単に振り返ることにしよう。
試合会場は2年前、アジアカップ決勝の舞台となったドーハ(カタール)のカリファ・スタジアム。半袖だと肌寒いぐらいの気温で、ピッチコンディションも良い。一方で観客はメインスタンドの一部分だけ開放され、日本とカナダのサポーターが7対3ほどの割合で入っているのみ。いつものAマッチとはちょっと違った雰囲気となった。
カナダは4-3-3システムを採用し、日本のトップ下とボランチに睨みを利かすように中盤の3枚を配備。本田圭佑と長友佑都の主力2枚を欠く日本はいつもの4-2-3-1で、トップ下に香川真司、左サイドに乾貴士を置いた。そして左サイドバックには酒井高徳を起用した。清武弘嗣が別メニューで調整を続けていたこともあって、乾に先発のチャンスが巡ってきたのだ。
前半9分だった。ボールを持ち上がった長谷部誠が裏に抜け出した香川にパスを送り、相手GKのクリアボールを拾った岡崎が左足でループシュートを決めて先制点を奪った。だが、立ち上がりからペースはカナダ。日本は体格の大きい相手に球際で競り負け、セカンドボールを拾えない。中盤にいい形でボールが入らず、前線もボールがうまく収まらないという我慢の時間が続いた。
20分過ぎになってようやく香川を中心にした素早いコンビネーションでチャンスをつくるようになり、26分には前を向いた香川のスルーパスを引き出した乾がシュートを放っている。しかし何人もが絡むぶ厚い攻撃にまでは至らなかった。