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悪条件を越えて“日本らしく”勝て!
ヨルダン戦で見えてくる本当の実力。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2013/03/25 13:40
2012年6月、埼玉スタジアムで行われたヨルダン戦では、6-0と日本が圧勝。だが今回、ヨルダンのホームで臨む一戦ではヨルダンのメンバーも大きく変わり、全く予想がつかない。
一昔前の日本代表なら、足をすくわれてしまいそうな条件が揃っている。
勝てば世界最速でブラジルW杯出場権を獲得できる大一番。
日本人サポーターに1000枚以上のチケットが売れているとはいえ、約2万人を収容するヨルダンのキング・アブドゥラ・スタジアムは独特の不穏な空気に包まれ“完全アウェー”の様相を呈する。
ピッチコンディションは見た目のグリーンを裏切る「デコボコ」と評していいほど。また、ある時間帯は30度を超え、ある時間帯には肌寒ささえ感じさせるという現地の気候は、日本の選手にとっては「異常」と言う他ないほど不安定である。
本田圭佑と長友佑都という絶対的な主力を故障で欠き、それによって沸き上がる不安を解消するべく行なわれた調整試合のカナダ戦では、結果よりも大事な内容面でいくつかの課題を露呈した。何もこの試合でW杯出場を絶対に決めなければならないわけではないが、本番までのスケジュールを考慮すれば、この試合で絶対に決めたほうがいいことは誰もが理解している。
6-0と大勝した1年前の対戦データはほぼアテにならない。
ヨルダンは、昨年6月にホームで行なわれたグループリーグ第2戦で6-0と大勝した相手である。FIFAランキング(3月14日現在)を真に受ける必要はないが、26位の日本にとって90位のヨルダンは格下と言っていい。
ところがグループBの最下位に沈むこのチーム、ホームでは昨年9月に2-1でオーストラリアを下すなどホームアドバンテージを極めて有効に活かす傾向にある。しかも、昨年後半から代表メンバーを入れ替えており、1年前の対戦データはほぼアテにならない。
W杯出場権獲得に王手を掛けた重要な一戦のプレッシャー、しかし「たとえ負けても次がある」という心の隙を生みやすい条件。完全アウェーの洗礼、荒れたピッチと不安定な天候。ホームで変貌する格下の相手、不十分なデータ。さらに、絶対的な主力の不在と、それに誘発されるように調整試合で露呈した不安――。おそらく過去これほどまでに、日本が足をすくわれそうな条件はない。
カナダ戦では、相手のプレッシャーに単純なミスを連発。
カナダ戦で浮き彫りになった課題は、誰の目にも分かりやすい初歩的なものだった。
モチベーションを漲らせる若手中心のチームを相手に受け身に回り、身体の温まらない時間帯に前線からハイプレッシャーを受け、これに耐え切れず単純なミスを連発。頭の回転に身体の反応が追いつかない印象で、ポジショニングも曖昧。リズムを掴み損ねて後手に回ると、相手のスピードと運動量を嫌ってラインを下げ、最後列と最前列が間延びしてセカンドボールを拾われる。苦し紛れのロングボールが今のチームのキャラクターに合わないことは、前線でキープできる本田やスペースに走れる長友がいても同じことだ。