南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
南アに置き忘れた「ガラスの靴」。
“シンデレラ”日本代表に3つの課題。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/09 11:30
日本が参考にするべき教材は多い。例えばドイツは……。
イングランドとの親善試合から約1カ月。日本代表は魔法が解け、再びスタート地点に戻ってきた。
南ア大会は全般的に見るべきところが少ないとも言われているが、日本が参考にできそうな教材はいくつも転がっている。たとえばドイツもその1つだ。
ドイツはイングランドやアルゼンチンに大勝して台風の目となったが、ポドルスキのような選手を除けば、ずば抜けたスピードの持ち主がいるわけでもない。カウンターを軸にした快進撃を支えたのは、攻撃陣の質の高いオフ・ザ・ボールの動き方であり、練り上げられた連動性であり、エジルなどの視野の広さと判断の速さだった。
勿論、ドイツの選手と日本の選手の身体能力が同じだ、などと主張するつもりは毛頭ない。ただ、ドイツがカウンターを展開するときの「原理」を参考にすることはできる(決勝トーナメントに入ってからのドイツは、一試合もボール支配率で相手を上回っていない)。
そしてドイツにおける選手の育成。
代表の長期的な強化育成を図っていく上で、優秀な若手を育てていくことが鍵となることは繰り返すまでもない。ましてや今回の日本代表は、決して平均年齢の低いチームではなかったのだから。
日本代表の健闘は、讃えられてしかるべきだ。選手のひた向きな姿勢と努力には素直に頭が下がる。であればこそ、選手の努力を最大限に活かせるチームのコンセプトやシステム、守備や攻撃の具体的なアイディアはあったほうがいい。
いつか王子様がやってくるのを待つのではなく、自分たちの力でW杯というパーティー会場に忘れた片方のガラスの靴を探しだす。その第一歩は「きちんと考える」ことになるはずだ。望外の結果に酔い続けている暇など、我々にはないのである。