南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
南アに置き忘れた「ガラスの靴」。
“シンデレラ”日本代表に3つの課題。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/09 11:30
ボール支配率と速攻のどちらに重心を置くべきか?
2つ目は「ボール支配率」だ。
従来、日本代表に関しては、中盤でパスを回してボール支配率を高めていくことが大事だと強調されていた。
しかし、ボール支配率を高めていくサッカーと、カウンターから速攻を狙うサッカーを両立させるのは難しい。敵陣でパスを回しながらゴール前で一気にテンポを上げたり、意図的に相手を焦らしてパスカットを狙い、カウンターをしかけていくといった戦い方ができる強豪国は別だが、ほとんどのチームは二者択一を迫られることになる。
実際、日本がボール支配率で相手を上回った試合は大会を通じて一度もなかった。アジアでの大会のように、明らかに格下のチームと戦う場合は別として、「弱者」である日本が強豪国と試合をする場合、ボール支配率と速攻のどちらに重心を置いたほうが勝利の確率が高まるのかということを、もう一度検討してみてもいいのではないだろうか。
3つめは「チームマネージメント」だ。
パラグアイ戦では疲労の蓄積のために、動きに精彩を欠く選手が目立った。
日本が本気で8強以上を目指していくのであれば、代表選手を選ぶ際のノウハウやコンディション管理のスキルを高めていくことが不可欠になる。南ア大会で得た教訓は、確実に次のブラジルW杯にも活かしていかなければならない。
日本代表が南アW杯で手にしたふたつの成果とは?
他方、具体的な成果として手にしたものも2つあった。
まずは守備から入る戦い方で結果を出したという実績だ。
これまでの日本代表では、ボールを持った相手に一人マークが付き、もう一人がパスコースをふさぐところまではよくても、どこでどうやってボールを奪うのかが徹底されていなかったために、結局はずるずるとラインが下がってしまう傾向があった。
だが今回のW杯では、特にサイドを深く抉られそうになったときなどは、多少強引でもダブルチームで相手を潰す動きが見られるようになった。
もちろん守っているだけでは点は取れないし、「日本代表の試合は守備的で面白くない」という外野の声があったことも否定できない。だが勝利に勝るものがないのも事実であり、その意味でも守備の重要性と、それぞれの局面での守り方(潰し方)が確認できたのは大きかったのではないか。
もうひとつは新たな世代の選手が台頭したことだ。
W杯での活躍が認められた川島はベルギー1部リーグのリールスへ移籍が決まり、長友も欧州トップリーグへの移籍が有力視されている。本田については指摘するまでもない。
彼らが呼び水となる形で、攻撃陣でさらに新しい才能が台頭することが待たれる。