南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
南アに置き忘れた「ガラスの靴」。
“シンデレラ”日本代表に3つの課題。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/09 11:30
「日本に何が起きたんだ?」
ヨハネスブルク市内のカフェでお茶をしたとき、イギリスのコラムニストであるサイモン・クーパーが何度となく口にしたのはこの台詞だった。グループリーグが終盤に差し掛かった頃、メディアセンターで外国人記者から一番多く尋ねられたのも、やはり岡田ジャパンの劇的な変化に関する質問だった。
彼らの目には、日本代表はさながら「シンデレラ」のように映ったのかもしれない。
大会前の下馬評ではEグループの最下位候補。にもかかわらずカメルーンに勝ち、オランダ戦の敗北を最少失点に抑え、デンマークにも勝利する。少なくとも成績の面では、一種の魔法をかけられたような状態になっていたからだ。
日本の分岐点となったイングランドとの親善試合。
では、いつ魔法はかけられたのか。きっかけとなったのは5月30日にグラーツで行われたイングランドとの親善試合だったように思われる。
イングランドと刃を交えるにあたり、岡田監督は4-3-3を初めて採用。従来の4-2-3-1に代わり、阿部を中盤の底に、その前に長谷部と遠藤を並べるシステムを採用した(日本代表のシステムは4-3-3と書いた方がしっくりくる。松井・大久保と遠藤・長谷部では、役割やポジション取りなどが明らかに違う)。
結果的にこれはずばりと当たる。たしかに岡田監督はコートジボワール戦で4-2-3-1を再びテストしたし、やがては本田をワントップに抜擢するという決断も下すことになる。また中盤で相手をマークする方法にも微調整を加えていくわけだが、当時は優勝候補の一角とされていたイングランド相手に、まがりなりにも「試合ができた」ことを踏まえ、W杯に向けた基本システムと選手の顔ぶれを固めることができた。
3戦目のデンマーク戦で“化けた”日本代表。
とはいえW杯の序盤戦は、まだまだ手探り状態で戦っていた印象が強い。
むろん日本の選手は、最後まで集中力を切らさずによく守りぬいた。それがカメルーン戦におけるW杯での2大会ぶりの勝利につながったし、昨年の9月に0-3で完敗していたオランダと、0-1という最少得点差の試合に持ち込むことも可能にした。この2戦で選手が得た自信と手ごたえは、決して小さくなかったはずだ。ただし自分たちで積極的に攻撃をしかけ、ゲームをコントロールするというところまでは至っていなかった。
ところが3戦目のデンマーク戦は、一転して出色の内容となる。
ともすれば本田と遠藤のフリーキックばかりに目が奪われそうになるが、忘れてならないのはオープンプレーから相手を崩す回数も増えている点だ。