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アーセナル8季連続の無冠濃厚……。
それでもベンゲル退任が無い理由。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/01/14 08:01

アーセナル8季連続の無冠濃厚……。それでもベンゲル退任が無い理由。<Number Web> photograph by Getty Images

年明け1月1日アウェイでのサウサンプトン戦に臨むベンゲル監督。この試合に引き分け、12月からの4連勝がストップした。

アルシャビンとウォルコットの起用法に問題が?

 敢えて、指揮官の目を疑うとすれば、アンドレイ・アルシャビンの起用方法になるだろうか?

 4年前、ベンゲルとしては異例の「完成品」として購入されたロシア人FWは、古巣のゼニトや代表でのはまり役、セカンドストライカーではなく、3トップのアウトサイドで使われることが多かった。得意の位置で十分なチャンスを与えられていれば、契約が残り半年を切った今冬に、クラブからは売却ではなく1年間の契約延長を望まれる30代選手となっていた気がしてならない。

 同じ事はセオ・ウォルコットにも言える。但し、今季序盤までの話だ。

 ベンゲルは、サウサンプトンで10代のFWとして台頭したウォルコットを入団させ、ウィンガーとして起用してきた。コンバート成功例としては、ウィンガーだったアンリのセンターフォワード転向があるが、ウォルコットは16歳で移籍した当初からストライカーとしてのこだわりを持っていた。コースを選んでソフトにネットを揺らすアンリばりのフィニッシュは、当時から得意だった。

 今季のセンターフォワードへの再転向は、契約最終年の今季、まだ23歳のウォルコットに、年俸とFW起用の増加を残留条件とされたことがきっかけだが、ニューカッスル戦でのハットトリックを見れば、「機が熟した」という指揮官の説明にも一理あると思わされる。

 カットインからファーサイドに流し込んだ1点目は得意のパターンだが、ゴール前の混戦から、迅速かつ冷静に決めた2点目、ドリブル突破で倒されても、立ち上がって貪欲に決めた3点目は、練習ではFWとしてもプレーしてきた環境下での成長と、実戦でのアピールを必用とされた状況下での執念を示すものだった。

ベンゲルがいたからこそ……才能ある若い選手が集まった。

 新契約交渉は後半戦に持ち込まれたが、そもそもウォルコットは、若手の育成と登用に積極的なベンゲルが監督でなければ、アーセナルを移籍先に選んでいたかどうか怪しい。

 一足先にアーセナルとの契約延長に合意した若手5名のうち、アレックス・オクスレイド・チェンバレン、アーロン・ラムジー、カール・ジェンキンソンも同様だ。

 やはり新契約を結んだ1人であるジャック・ウィルシャーは、中盤の核として、長期欠場から待望の復帰を果たしており、ベンゲルが「延長合意が1月の最優先課題」というウォルコットが、FWとして得点を上げ続け、経営陣が「獲得資金はある」という即戦力も加われば、最終的にリーグ4位以内に食い込み、16年連続のCL出場権というトロフィー獲得も現実的だ。

【次ページ】 監督辞任のタイミングには「優勝」の2文字が必要だ。

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