ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
2位のレバークーゼンで準レギュラー。
サッカーに全て捧げる細貝萌の情熱。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/01/12 08:02
高校時代はトップ下、浦和レッズではCB、SB、WB、ボランチ、アウクスブルクではボランチ、レバークーゼンでは主にSBでプレーしてきた細貝。どのポジションでも献身的なプレーを見せるが、今年はレバークーゼン、日本代表での「本職」ボランチでの定位置確保が期待される。
自らの「弱さ」を口に出せるのは、本当に弱い人間か、誰にでもある弱い部分を認めて、そこに打ち勝っていこうとする強い人間のどちらかだろう。
「自分はもともと上手い選手ではない。上手くなければ練習するしかない。休みがあるのであれば練習して、いろんな海外組の他の選手との距離を縮めなきゃいけないんです」
淡々とそう語るのはレバークーゼンの細貝萌だ。
昨年の細貝は上半期('11-'12シーズンの後半戦)をアウクスブルクの一員として、下半期('12-'13シーズンの前半戦)を強豪レバークーゼンの一員として戦った。
昨シーズンの後半戦、アウクスブルクでは出場停止となった1試合をのぞいて、すべてのリーグ戦に先発。強豪クラブのレバークーゼンへと戦いの場を移して挑んだ今シーズンの前半戦は、開幕前に細貝の先発を予想するメディアはドイツでも日本でも皆無だった。にもかかわらず、気がつけば17試合中で12試合に出場している。これはレバークーゼンの選手の中で11番目の成績。つまり、準レギュラーと言っても良い活躍を見せているのだ。左サイドバックのレギュラー格であるカドレツが怪我したことも出場試合数を伸ばせた要因だったのだが、そのことがバイエルンを追走する2位でシーズン前半戦を終えたレバークーゼンにおいて12試合でプレーした価値を落とすことはない。
「自分は上手い選手ではないです」と子供たちに告白する細貝。
2012年の年の瀬、冬休みを利用して、レバークーゼンの実質的な親会社にあたるバイエル社が東京都内で親子サッカー教室を開催した。参加した親子たちが、細貝と一緒にサッカーを楽しんでいたからだろう、会場となった体育館は笑顔が溢れ、活気が満ちていた。
イベントが終わったあとに、細貝は子供たちに語りかけた。
「自分は上手い選手ではないです。でも、気持ちを前面に出してやってきたことで、今までの自分のサッカー人生を切り開いてきたので、これからも強い気持ちを持ってやっていきたいなという風には思っています」
こうした言葉を子供たちに伝えることのできる細貝が、弱い人間なのか、それとも弱さに打ち勝っていこうとする強い人間なのか、答えはあきらかだろう。
ドイツに住む細貝は、バイエル社からサッカー教室に参加してほしいと打診を受けたとき、快く了承すると当時に、日本に滞在する時間は出来るだけ短くして欲しいと伝えた。
ブンデスリーガでプレーする選手がまとまった休みをとれるのはシーズンオフとなる6月とその前後、そして年末年始に設けられたウインターブレイクだけだ。祖国である日本を離れて戦っている選手たちは、休みの間には出来るだけ長く日本で過ごそうとする。日本には、言葉で不自由することのない環境が用意されていて、食べなれた食事があり、家族がいて、心を許せる友人や知人がいるからだ。
しかし、細貝は違う。
アウクスブルクでプレーしていた昨シーズンのウインターブレイクには、日本に帰ることはなかった。