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女子クロスカントリーのパイオニア。
石田正子が“世界”と渡りあえる理由。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byShino Seki

posted2013/01/12 08:01

女子クロスカントリーのパイオニア。石田正子が“世界”と渡りあえる理由。<Number Web> photograph by Shino Seki

フィンランド・クーサモで開かれた大会では、総合9位と健闘した石田。今季のW杯ではこの自身の初戦以降、参加した3戦連続でトップ10入りと高いレベルを維持している。

どんな状況でも、絶対に自らを失わない強い心。

 何よりもすばらしかったのは、最後まで集団の中で譲らず、2位と1秒、3位とは0.9秒という僅差の競り合いに持ち込んだ内容である。

「フリーは以前より良いテクニックで走れるようになったけれど、クーサモではまだうまく走れていない部分があったのでそこを改善してカナダに臨みました。フリーの最後のスプリント争いでも争えたのは本当に良かったと思います」

 と、石田自身も振り返る。

 こうしたキャリアに表れている着実な積み重ねを支えているのは何か。

 その源を聞くと、石田はこのように答えた。

「自分を見失わずに、自分は何をしたいのか常に考えて実行することでしょうか」

 北欧を中心に、クロスカントリーの地位が高い海外とは異なり、日本では、競技環境は決して恵まれてはいない。海外遠征だって決して容易なわけではない。その中にあっても、どのようにすれば長く海外にいて練習に励むことができるのか、方法を模索しては手はずを整えることに努めてきた。

「速くなるために、自分が動きやすい環境を自分で作る」

 かつて、日本チームのワックスマンだったイタリア人のファビオ・ギザフィに、辞書をひきながら、「いいコーチを紹介してください」と英文の手紙を手渡したのも、そうした石田の実践する力を示すエピソードの一つだ。

「そうですね、速くなりたいということからですが、やっぱりそのためには自助努力がいちばん必要なんじゃないですか。自分が動きやすい環境を自分で作っていくような」

 その後、「紹介してほしい」と依頼されたギザフィ自身が心を動かされ、日本チームのコーチに就くことになるのだが、石田は自らについてこう付け加える。

「(行動力があるのは)意志が強いというか、抜け目のなさというか(笑)」

 いずれにせよ、現実に甘んじることなく、自分のありたいように、自らの行動で現実を創り出していく力こそ、石田を石田たらしめている。

【次ページ】 3年ぶりの日本のお正月。五輪を目指す日々は続く……。

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石田正子

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